検索エンジンに対する逮捕歴の削除請求

※H26.2.1追記
以下の記事は「判決後5ヶ月で,再犯の可能性が疑われる」ケースに関する私見である。一般論としては,前科記事であっても,条件さえ満たせば削除が認められることは言うまでもない。この点については,こちらのエントリーを参照されたい。

興味深い記事を見つけた。

ヤフー:男性が提訴 逮捕歴の表示中止など求め
毎日新聞 2013年09月19日 13時38分

大手インターネット検索サイト「ヤフー・ジャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕歴を示す記事が表示され、名誉を傷つけられたとして、京都市の40代男性が、同サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に対し、検索結果の表示中止や慰謝料など約1100万円を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが分かった。提訴は今月2日付。

訴状によると、男性は昨年、京都府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕され、今年4月に執行猶予判決を受けた。現在も同サイトで検索すると、逮捕時の報道機関の記事を転載した複数の第三者のサイトのアドレスや記述の一部が表示され、男性の逮捕歴が分かる状態になっている。

原告側は「逮捕歴が知られれば、再就職に支障が出る。無名の一私人で、すでに執行猶予判決を受けており、内容が事実であっても不特定多数に検索結果が表示し続けられることは名誉毀損(きそん)に当たる」と主張している。

ヤフー広報室は「利用者の信頼や期待を損なう恐れがあるので、検索サービスに削除要請があっても基本的には応じない。今回の提訴に関する弊社の考え方は裁判で明らかにする」とコメントした。

迷惑条例違反で執行猶予と聞くと,どうしても再犯を疑ってしまう。また,個々のサイトではなく,検索エンジンを訴えていることからして,対象記事が多数に上っていることが予想される。だとすれば,それだけ社会の耳目を集める事件だったのではないか。もしそうなら,判決後5ヶ月程度でその公共性が失われることは稀だろう。

もう1つ,訴額についても気になることがある。1100万円のうち100万円は弁護士費用として,残りは何であろうか。慰謝料だけで1000万円はさすがに高すぎる気がする。就職を妨げられたことによる逸失利益が含まれているのだろうか。それとも異なる原因に基づく複数の慰謝料とか?いずれにせよ,賠償については削除以上に容れられる可能性が低い筈だが,それでもなお,印紙代を費やしてでも請求する価値があるということか。

仮に自分が依頼されたら,「勝算無し」として断ってしまう事案だと思う。東京地裁(民事9部)基準でも却下は免れないだろう。それだけに認容されれば大金星であるが,原告側には何か隠し球があるのだろうか。続報が待たれるところである。

田中一哉

1969年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在,ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除,投稿者に対する法的責任追及などに従事している。

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