Torは無敵か?

Torは元々アメリカ海軍調査研究所が作り出した匿名化ソフトである。その後,オープンソース化されて現在に至る。世界中の技術者が心血を注いで磨き上げてきただけあって,その匿名化機能の強靱さには比類がない。それだけに,これが犯罪行為に悪用されると非常に厄介なことになる。この点については,一昨年のパソコン遠隔操作事件の例を見れば明らかだろう。

ただ,完璧なツールが常に無敵の威力を発揮するかというと,そうではない。使い手に遺漏があれば,無敵のツールといえども本来の効用を発揮できない。この点はTorにおいても変わるところはない。そして,大抵の悪用者はTorを使いこなすだけの知識と技能に欠けている。

Torは言論の自由を守るためのツールである。これを犯そうとする政府や団体,その他の勢力から発信者を守るため改良が重ねられてきた。よって,犯罪行為の隠蔽にこれを用いるが如きは,完全に目的外使用となる。そして,このように本来予定されていない目的への転用はTorの匿名化機能を曇らせる。

Torに値しない者が,これを目的外で使用した場合,どのような結果になるかは火を見るよりも明らかである。たまに「Tor使いが逮捕された」との報道を目にすることがあるが,これなどその良例であろう。実は今,自分でもTor絡みの事件をやっていて,犯人特定に使えそうな方法を1つ思いついたのである。早ければ今月中にも,この新しい方法を試してみるつもりである。そして,もし上手くいったら,その成果を修士論文で発表しようと考えている。この意味で,自分的には「1粒で2度美味しい」事件というわけである。

田中一哉

1969年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在,ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除,投稿者に対する法的責任追及などに従事している。

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