発信者情報開示請求訴訟の概要

悪意ある書き込み者のIPが判明したら,次はプロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起することになる。

発信者情報開示請求訴訟の管轄は,原則,当該プロバイダの本店所在地を管轄する裁判所である。ただ,訴え提起時に上申書を提出しておけば(少なくとも東京地裁では)プロバイダの所在地に関わりなく受理してもらえる。この辺は神田先生のブログに詳しいので,そちらを参照されたい。

進行は,概ね2~3回の弁論期日を経て,判決に至ることが多い。まれに弁論準備手続きに付されることもあるが,これは担当裁判官がこの種の事件に慣れていない兆候であるので注意が必要である(審理が長引くことが多い)。

裁判官の中には,書き込み内容の権利侵害性について,慎重な立場をとる者も少なくない(要するに「この程度で名誉毀損になるの?」との疑問を持つわけである)。そのような場合,同種判例を多数示して,理解を促すのが効果的である。

プロバイダ側の代理人には大手事務所の弁護士が就くことが多い。しかし,仮処分によりIP開示が認められている時点で,すでに彼らにとっては相当筋悪である。よって,この種の訴訟類型で原告が完全敗訴することは,あまり考えられない状況にある。

守秘義務との関係で,これまで裁判の内容については,イマイチ書きづらい面があった。しかし,今回たまたま,仕事とは無関係に訴訟提起する機会を得た。せっかくの機会であるので,今後,この手続きを追いかける形で,発信者情報開示請求訴訟から損害賠償請求訴訟の判決に至るまでの詳細を書いてみようと思う。

田中一哉

1969年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在,ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除,投稿者に対する法的責任追及などに従事している。

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