前科に関する記事の削除

前科や逮捕歴は個人情報の最たるものである。このような情報が公表されると,情報主体は退職を余儀なくされたり,家族がイジメにあったり,異性と交際できなくなったりするなど,深刻な影響を受けることが多い。

ただ,刑事手続は公的な手続きであるので,このような情報の公開が直ちに情報主体のプライバシー権を侵害するとはいえない。この点,最高裁も,プライバシー権と手続きの公共性を秤にかけて考えましょうという立場を取っている(ノンフィクション「逆転」事件)。

それでは,実際に前科に関するネット上の記事は消せるのか?
端的に言えば,「時間が経てば消せる」というのがその答えになる。
具体的に,どのくらいの時間が?
これも一概には言えないけれど,東京地裁の場合,事件から最低3年程度が必要と考える裁判官が多いようだ。
もちろんこれは標準的なケースの話で,重大犯罪であればより長期の期間経過が必要だし,逆に,条例違反などの軽微な罪であれば,2年くらいでOKを出してくれる裁判官もいる。

このほかにも,「被害者との間で示談が成立しているか?」,「情報主体が公的地位にあるか?」,「他に前科・前歴はないか?」といった要素が考慮される。よって,これらの点についても,予め陳述書などで疎明しておく必要がある。

田中一哉

1969年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在,ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除,投稿者に対する法的責任追及などに従事している。

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