弁護士費用は誰が負担するか?

訴訟費用が敗訴者負担であることは割に良く知られた事実である。しかし,ここでいう「訴訟費用」に弁護士費用が含まれないことはあまり知られていない。
どういうことかというと,民事訴訟においては勝敗に拘わりなく弁護士費用は各当事者が負担するのが原則ということ。
もっとも,不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の場合は少し事情が異なる。

後者の場合,被害者には,加害者の違法な行為によって,弁護士を雇わざるを得なくなったという事情がある。よって,そのための費用も一種の「損害」と考えることができる。そして,このような事情はネット上の名誉毀損の場合も同様なので,被害者は投稿者に対し,自分が負担した弁護士費用の支払いを請求することができる。

なお,ネット上の名誉毀損の場合,被害者は投稿者を特定するために仮処分など複数の手続きを先行していることが多い。そして,近時の判例はこのような投稿者特定のための費用についても「損害」に含めることを認めている。すなわち,被害者は,損害賠償請求訴訟のための弁護士費用のみならず,投稿者特定のための弁護士費用についても投稿者に負担させることができる。そして,このような費用は通常ある程度まとまった金額になるから,書き込み内容だけ見て賠償額を計ろうとすると,後で思わぬ齟齬が生じる恐れがある。この点については,とりわけ投稿者側の代理人になる場合に留意が必要である。

田中一哉

1969年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在,ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除,投稿者に対する法的責任追及などに従事している。

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