名誉毀損に対する刑事告訴

インターネット上の名誉毀損が甚だしいとき,あるいは,民事訴訟を提起しても誹謗中傷が止まらないときには,別途,刑事告訴を検討することになる。ただ,名誉毀損罪は必ずしも重い犯罪とは言えないため,告訴しても,警察は積極的に動いてくれないことがある。また,プライバシー権侵害については,そもそも犯罪ではないので,告訴自体をすることができない。このような理由から告訴を選択できる場面は相当限られてくる。

では,告訴には,どのようなメリットがあるか?

まず,告訴が受理されると,投稿者は「被疑者」として捜査の対象となる。その結果,投稿者は自分のパソコンを押収されたり,警察署で取り調べを受けるなどの不利益を被る。そして,このような経験は,一般人にとってショッキングな出来事であるのが通常だから,投稿者に対し,書き込み継続の意思を放棄させる端緒となりうる。実際,民事訴訟だけでは止まらなかった誹謗中傷が,告訴を契機に止むことは少なくないのである。

またもし仮に,投稿者が不起訴になったとしても,そのこと自体,それなりに意味がある。なぜなら,不起訴処分後,投稿者がさらに誹謗中傷を続けた場合,今度こそは起訴される可能性が高くなるからである。このことから刑事告訴には将来の同種書き込みを抑止する効果も期待できる。

田中一哉

1969年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在,ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除,投稿者に対する法的責任追及などに従事している。

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