5ちゃんねるに対する削除&発信者情報開示請求

サイトの概要

5ちゃんねるは言わずと知れた日本最大の電子掲示板である。2009年時点の利用者数は1170万人。過疎化が指摘されて久しいが,未だこれを超えるネットコミュニティは現れていない。そのため,この掲示板を舞台にした中傷事件の発生件数も非常に多くなっている。

運営者

  1. 2014年4月,2ちゃんねるは運営内部の紛争により分裂した。そのため,一時期,2ch.netと2ch.scという2つの2ちゃんねるが併存していた。前者はRacequeen Inc.というフィリピン企業(会長はPINKちゃんねる運営者のジム・ワトキンス氏),後者はPACKET MONSTER INC.というシンガポールの会社がそれぞれ管理していた。
  2. 2017年10月1日,2ch.netはフィリピンのLoki Technology,Inc.に譲渡され,名称も5ちゃんねる(5ch.net)に変更された。

法的手続きの可否

上述のとおり,5ちゃんねるの運営は外国企業が行っているため,日本の裁判所の判決・決定は直ちに彼らを拘束しない。そのせいか,5ちゃんねるについては,削除や投稿者の特定が不可と考えている人も多い。しかし,実際のところ,5ちゃんねるも日本の裁判所の判断に従う姿勢を示している。よって,5ちゃんねるに対しても,国内のウェブサイト同様,削除や投稿者の特定が可能である。そのための典型的手続きとしては,裁判所で仮処分決定を取得した後,これを示して,管理者に削除等を求めることになる。

5ch.netと2ch.scの関係

  1. 2ch.scは基本的に5ch.netのデータをコピーして使っている。ただ,それらに加え,sc独自の書き込みも可能な仕様となっている。
  2. 利用者数では従前のドメインを継承した5ch.netの方が断然多い。しかし,2ch.scも徐々に追い上げている状況にある。
  3. 分裂に伴い,5ちゃんねるに対する法的措置には多くのバリエーションが生じた。また,裁判所の取り扱いも分裂前とは異なる部分が生じている。

逮捕記事の削除

 5ちゃんねるについては,過去の逮捕記事(前科記事)に係る相談が多いのが特徴である。これは同掲示板上にニュース系の板が多数設置されているのが原因と思われる。このような記事については,プライバシー権侵害を理由に削除仮処分を申し立てることになるが,事件から概ね3年程度経過しないと裁判所の決定を得るのは難しい状況にある。

5ちゃんねる側の対応

  1. 削除・開示請求に対する5ちゃんねるの対応は概して良い。処理が早く,柔軟である。これは後述する分裂騒動により生じた思いがけない変化といえる。
  2. これに対し2ch.scの方は旧態依然との印象を拭えない。特に①開示請求が公開されること,②その処理に長時間を要することには問題が多く,改善が望まれる。

その他所感

  1. 5ちゃんねるに対しては,未だに「アングラ」「無法地帯」といった印象を抱いている人が多い。しかし,中傷行為に対する管理者の対応を見る限り,これは妥当な評価とはいえない。上記のとおり,5ちゃんねるは日本の裁判所の判断を尊重しているし,誹謗中傷の温床になりやすいTorやプロクシの使用を規制している。それでも種々の問題は残るものの,5ちゃんねる自身が「無法地帯化」を望んでいないことは確かなように思われる。
  2. 5ちゃんねるに対する法的措置については,諸事情から詳細を書くのが難しい状況にある。ただ1つ強調しておきたいのは,5ちゃんねるだろうと2ch.scだろうと,削除や発信者の特定が可能だということ。書き込まれたのが5ちゃんねるだからといって,被害者が泣き寝入りしなければならない理由は何もないのである。

費用と所要時間

5ちゃんねるに対する法的措置の費用および所要時間は以下のとおり。

【費用】
削除 55,000円(任意請求)
   195,000円(仮処分申立)
投稿者の特定 330,000円

【所要時間】
削除 1日~2週間
投稿者の特定 4~8ヶ月

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