[プロバイダの主張例]
本件投稿の内容からは、本件発言がなされた具体的な場面や文脈は読み取れない。そのため、一般読者は、××××××について医師と患者の間で行われたやりとりにおける特定の文脈のもとで本件発言がなされた可能性(たとえば、患者から、「その病気ではどのような悪いことが起こるのですか」といった問いがなされた場合等)も考慮しながら本件投稿を読むことになる。また、一般読者は、投稿者の特性(本件病院での診察において××××××との言及がなされたこと)に基づき、投稿者が医師の発言についてやや特異な受け取り方をした可能性があることも想定して本件投稿を読むことができる。こうしたことから、仮に本件発言を何らか不適切なものであると解することができたとしても、一般読者は本件発言がなされた背景などを考慮しながら本件投稿を読むのであるから、直ちに「本件病院の医師は、精神疾患の患者に対し、悪意あるいは偏見を持っているとの印象」を抱くとはいえない。
[反論例]
本件記事中に上記「可能性」あるいは「背景」を推知させる記述はない。それゆえ、このような事情を考慮して記事内容を解釈することは、一般読者の普通の注意と読み方とはいえない。
[関連裁判例]
東京地方裁判所令和5年6月30日判決は次のように判示して、被告(Google LLC)の上記主張を棄却した。「被告は、本件記事の内容からは、本件説明がなされた具体的な場面や文脈は読み取れないことから、一般読者は、××××××と診断されたという本件発信者の特性を踏まえ、本件発信者が医師の発言についてやや特異な受け取り方をした可能性があることも想定して本件記事を読むことができるから、直ちに、本件医療機関の医師が、精神疾患の患者に対し、悪意あるいは偏見を持っているとの印象を抱くとはいえないと主張する。しかし、本件マップ上のロコミは、インターネットユーザーが医療機関、飲食店その他の施設のサービス内容等についての情報を手軽に収集するための手段であると考えられ、そのような本件マップの特性に照らすと、本件マップ上のロコミの読者は、それを熟読せずに短時間で閲読することが一般的であると考えられる。そうすると、一般的な読者の普通の読み方として、本件マップ上のロコミに記載されていない背景事情を想定しながら読んだり、当該ロコミの記載者(発信者)の特性を考慮したりしながら閲読したりするとは必ずしも認め難いから、被告の上記主張も採用できない。」(9ページ18行目~10ページ5行目)
サイバーアーツ法律事務所所属。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。インターネット関連事件を専門に受任している弁護士です。