Facebook(フェイスブック)の誹謗中傷・なりすまし投稿の投稿者を特定する方法と削除・損害賠償

Facebook(フェイスブック)は実名で使うことが前提のサービスですが、他人の名前と写真を使ったなりすましアカウント、知人や取引先による中傷の投稿、友達限定の投稿での名誉毀損、投稿の無断転載といった被害が起きています。投稿者が分かっている場合は、投稿者に直接、削除や損害賠償を求めます。匿名のアカウントや、なりすましの場合は、発信者情報開示請求で投稿者を特定します。投稿やアカウントを消すには、Facebook を運営する Meta Platforms, Inc. に対する削除請求を行います。

この記事では、Facebook の投稿について、投稿者が分かっている場合と分かっていない場合に分けて手続の流れを整理し、期間の目安、認められる基準、認められやすい投稿と認められにくい投稿、裁判例、削除請求をまとめます。運営会社は Instagram と同じで、手続の仕組みは「Instagram のなりすまし・誹謗中傷の投稿者を特定する方法と削除」と共通する部分が多いので、重なる部分は簡潔にしています。

要点

  • Facebook は実名制のため、投稿者が分かっている事件が多く、当事務所の裁判例データベースの Facebook の裁判例25件のうち11件は、投稿者本人に対する削除や損害賠償の請求です。国会議員による投稿で110万円の賠償を命じた判決があります。
  • 友達限定の投稿や、閲覧者が取引関係者に限られる投稿でも、名誉毀損は成立します。閲覧できる人が固定されて外に広がらない事情がない限り、人数が少ないことは理由になりません。
  • 運営会社は米国法人ですが、日本の裁判所の管轄が認められています。保有しているのはログイン時のIPアドレスと日時、登録された電話番号とメールアドレスで、投稿時のIPアドレスは保有していません。
  • ログイン時の記録から投稿者を特定する請求は、2022年10月の法改正前には厳格な解釈で退けられた例がありましたが、改正法で「侵害関連通信」として開示の対象になることが明文化されました。

1. Facebook の投稿で問題になる類型

  • 知人・取引先・対立する相手による実名の投稿 元顧客、取引先の代表者、議員、団体の関係者などが、実名のアカウントから中傷や私生活上の事実を投稿するもの。投稿者が分かっているため、開示請求を経ずに削除や損害賠償を求めます。
  • なりすまし 本人の名前と顔写真を使ったアカウントで、本人が書いたように見える投稿や、本人の個人情報・履歴書などを投稿するもの。名誉権、プライバシー、肖像権の侵害として扱われます。
  • 匿名または架空名義のアカウントによる中傷 実名制でも本人確認は厳格でないため、架空名義のアカウントからの投稿やコメントがあります。発信者情報開示請求で特定します。
  • 投稿の無断転載 Facebook に書いた文章や写真を、他人がブログなどに転載するもの。著作権の侵害として扱われます。
  • プライバシーの侵害 不倫などの私生活上の事実を投稿し続けるアカウント。アカウント自体の削除が命じられた例があります。

2. 投稿者が分かっている場合

投稿者の氏名と連絡先が分かっていれば、発信者情報開示請求は不要です。投稿者に対して、投稿の削除と損害賠償を求める通知を送り、応じなければ訴訟を提起します。Facebook の裁判例では、次のような判決があります。

一方、請求が棄却された例もあります。氏名に続けて「詐欺師」の語と事業名を並べただけの投稿は、本人が詐欺の加害者か被害者かも分からないとして事実の摘示が否定されました(東京地方裁判所平成28年9月8日判決)。支援活動をめぐる金銭請求への抗議としてされた投稿は、目的と真実性から違法性が否定されました(同平成28年8月31日判決)。

友達限定の投稿でも名誉毀損になる Facebook では公開範囲を友達に限定できますが、閲覧者が限られることは名誉毀損を否定する理由になりません。東京地方裁判所平成28年4月22日判決は、閲覧できる人数は少ないとはいえず、閲覧者が固定されて外部に伝播しないと想定されていた事情も見当たらないとし、「法的に保護されるべき原告の社会的評価は、社会全体における評価に限らず」取引関係者の間における評価も含むとしました。同令和6年7月18日判決も、本人と分かる閲覧者が特定少数でも、内容を流布するおそれがあれば名誉毀損が成立するとしています。

3. 投稿者が分からない場合:運営会社が保有する情報と手続の流れ

保有している情報 運営会社は、ログイン時のIPアドレスと日時、登録された電話番号とメールアドレスを保有しています。投稿時のIPアドレスは保有していません。なりすましアカウントの事案で、SMS用のメールアドレスと電話番号の開示を命じた判決があります(東京地方裁判所令和3年3月12日判決)。

日本の裁判所の管轄 運営会社は米国法人で日本に支店がありませんが、日本語でサービスを提供しているため、「日本において事業を行う者」として日本の裁判所の管轄が認められ、東京地方裁判所が管轄します(同令和3年3月12日判決、同令和5年6月15日判決)。

手続の流れ 運営会社に対する発信者情報開示命令の申立て(または仮処分)により、ログイン時のIPアドレスと日時の開示を受けます。2022年10月に始まった開示命令の手続では、開示命令とあわせて提供命令を申し立てるのが通常です。提供命令が出ると、運営会社から接続プロバイダ(携帯電話会社や固定回線の事業者)にIPアドレスなどの情報が直接渡され、申立人は同じ手続の中で接続プロバイダに対する開示命令を申し立てて、契約者の氏名・住所などの開示を受けます。現在は、この経路で投稿者の特定に至ることが多くなっています。運営会社から電話番号の開示を受けられれば、携帯電話会社への照会で特定できる場合もあります。運営会社は日本の裁判所の決定に従って開示や削除に応じており、決定が出れば開示は速やかに行われます。申立ての事実を投稿者に通知することがあるとされ、通知を受けた投稿者がアカウントを消すおそれがあるため、申立てと並行して証拠を保全しておく必要があります。

期間の目安 運営会社に対する手続は、申立てから開示まで2〜3か月程度が目安です。接続プロバイダに対する手続を含めると、投稿者の氏名・住所が分かるまで3〜4か月程度を見ておく必要があります。

4. ログイン時の記録から投稿者を特定できるか

Facebook はログインとログアウトの記録だけを残し、投稿ごとの記録を残しません。そのため、ログイン時の記録から投稿者を特定できるかが長く争われてきました。

2022年の法改正前 東京地方裁判所平成27年3月27日判決は、ログイン時の記録は投稿の通信の過程で把握される情報ではないとして、発信者情報にあたらないと判断しました。同平成28年6月21日判決も、開示の対象は投稿時の契約者情報に限られるとして請求を退けました。東京高等裁判所平成29年2月8日判決は、Facebook ではログイン状態が長く続き別の端末から同時にログインもできるため、投稿前の唯一のIPアドレスからの投稿と推定できる場合を除き、他のIPアドレスから投稿された可能性を無視できないとして開示を認めませんでした。

一方で、同じ時期にも、ログインにはメールアドレスまたは電話番号とパスワードが必要で、投稿できるのは登録者に限られるとして、投稿当日に何度もログインした者を投稿者と認めた判決(東京地方裁判所平成28年5月18日判決)や、アカウントが数日で削除され開示された記録が全ログインと認められる事案で投稿者を認定した判決(同平成27年7月2日判決)があります。投稿後のログインについて、携帯電話回線の契約者は投稿者と推認し、別の回線の契約者は認めなかった判決もあります(同令和元年11月8日判決)。

2022年10月の法改正後 改正法は、投稿と相当の関連性のあるログイン時の通信を「侵害関連通信」として開示の対象にすることを明文化しました。東京地方裁判所令和5年4月14日判決は、市議会議員が事件を隠したとする投稿について、多数のIPアドレスからのログインがあり問題のログインが投稿後のものであっても、パスワード入力が必要なこと、アカウントの他の投稿の内容が一貫していること、投稿後も関連するコメントが繰り返されたことから投稿者との同一性を推認し、開示を命じました。

5. 開示や賠償が認められやすい投稿と認められにくい投稿

認められやすい投稿

  • 本人の名前と顔写真を使ったなりすましアカウントによる投稿、個人情報や履歴書の投稿
  • 本人の顔写真を破いた画像など、肖像を貶める目的で加工した画像の投稿
  • 医療機関の管理に重大な問題がある、交通違反をして開き直った、支払に問題があるなど、具体的な事実を書いて社会的評価を下げる投稿
  • 不倫などの私生活上の事実を投稿し続けるアカウント
  • Facebook の文章や写真を、題名やコメントを付けて一体の記事にする形で転載したもの(埋め込み投稿の範囲を超える転載)

認められにくい投稿

  • 氏名と「詐欺」などの単語を並べただけで、本人がどう関わったのか読み取れない投稿
  • 氏名も特徴も書かれておらず、閲覧者の普通の注意と読み方では本人を指すと分からない投稿
  • 金銭トラブルへの抗議など、目的に公益性があり、内容が真実と認められる投稿
  • 投稿に近いログインの記録が残っておらず、投稿から離れたログインしか手がかりがない場合

6. 裁判例

当事務所の裁判例データベースには、Facebook に関する裁判例を25件収録しています(2026年10月現在)。本記事で触れた裁判例は次のとおりです。各リンク先に、事案の概要と判決理由の骨子があります。

7. 投稿やアカウントの削除請求

投稿者が分かっている場合 投稿者に削除を求めます。応じなければ、投稿者を相手に削除請求の訴訟を提起し、損害賠償とあわせて求めるのが通常です。

運営会社に対する請求 Facebook には、なりすましや嫌がらせを報告する窓口があります。名誉毀損やプライバシー侵害の投稿が申出だけで削除されることは少なく、裁判所の手続が必要になるのが通常です。削除の仮処分や訴訟で決定や判決が出れば、運営会社は削除に応じています。不倫を話題にすることに特化したアカウントについて、アカウント自体の削除を命じた判決があります(東京地方裁判所令和5年6月15日判決)。

削除と開示の順序 投稿者が分からない事案で損害賠償まで求める場合、先に投稿やアカウントが削除されると開示請求に必要な証拠が失われます。投稿のURL、表示画面、投稿日時、アカウントのプロフィール画面を保存した上で進めます。証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。

8. 損害賠償の額

Facebook の投稿について認められた賠償額は、国会議員の投稿で110万円、元顧客の中傷で慰謝料100万円、取引先の投稿で11万円、名指しのない投稿で28万円などです。投稿者に対する判決77件の認容額は「ネット上の誹謗中傷の慰謝料・損害賠償額の一覧」にまとめています。

9. ご相談について

Facebook の投稿やアカウントの削除、投稿者の特定、損害賠償の請求をご検討の方、投稿者として請求を受けた方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。費用についてはFeeをご覧ください。

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