Twitterに対する削除&発信者情報開示請求

サイトの概要

  1. ツイッターはTwitter,Inc.が運営するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である。本店所在地はアメリカのカリフォルニア州。本来であれば,同社を相手に手続をとるのが筋であるが,ツイッター社内部の管轄の影響で,日本では,Twitter international Companyを被告として訴訟等を提起するのが通常である。
  2. Twitter international Company はアイルランド企業であるため,日本から紙媒体の資格証明書を取得するのが難しい。そこで,実務上は,CRO(アイルランドの法務局のような機関)のウェブサイトから,電子署名付きの会社情報ダウンロードして,証明書原本に代える運用がとられている。

削除&投稿者特定の可否

削除請求については,国内ウェブサイトに対するのと変わらない。一方,開示請求については,ツイッターは,ツイート自体に係るログを記録していないという特徴がある。そのため,開示仮処分を申立てる際は,ログインに係る情報の開示を求めることになる。

問題点

  1. 上記ログイン情報については,①そもそもこれが,プロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」にあたるか,という問題がある。ログイン自体は,何ら,他人の権利を侵害しないからである(「権利の侵害」は有害情報[中傷ツイートなど]の送信によって生じる)。
  2. 法4条1項を巡っては,②このようなログインを媒介したプロバイダが「開示関係役務提供者」にあたるか,という問題もある。同条の文言からは「開示関係役務提供者」とは「侵害情報そのもの」を媒介した者と読めるからである。
  3. 上記各争点については,今のところ通説と言える見解はない(高裁の判断も分かれている)。上告された案件も多数あるが,いまだ最高裁の判断は示されていない。近い将来,これらに係る最判が出ることが予想される。

注意点

  1. ツイッターの場合,双方審尋期日は,債権者面接から3~4週間後に指定される。これは関係書類をアイルランドに送達するのに時間が掛かるためである。
  2. 呼出状および副本の翻訳は申立人側でしなければならないので,予め手筈を整えておかないと後で慌てることになる。

ツイッター側の対応

  1. 筆者が知る限り,ツイッター側の代理人は固定している。すなわち,某渉外事務所の一社指名であって,複数の法律事務所が担当することはない。
  2. 基本的に,ツイッターは,裁判所の決定が出れば,速やかに削除や開示に応じる。ただ,難しい争点を含む案件については,保全異議や起訴命令を出してくることがある。
  3. 発令から開示までの所要時間は極めて短い。早い時には,発令翌日に開示メールが届くこともある。発信者情報はこのメールに記載された手順に従ってダウンロードする。

費用と所要期間

ツイッターに対する法的手続の費用&所要時間は以下のとおり。本案(発信者情報開示請求訴訟)では,前記争点を巡って,当事者が主張立証を繰り返すため,他のウェブサイトに比べて時間が掛かる。

【費  用】削除 195,000円
      投稿者の特定 330,000円
【所要時間】削除 5~8週間
      投稿者の特定 5~10ヶ月

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