旧記事を投稿してから,だいぶ時間が経った。そこで,近時の情報を若干補充しておく。
1 削除請求について
削除請求については,5ちゃんねるが定めた手順に従って処理される。大まかに言えば,以下のとおりである。
⑴ 誰でもメールで削除要請をすることができる。しかし,必ずしも応じてもらえるとは限らない。
⑵ 裁判所の決定(削除仮処分決定)を得れば,原則として,削除してもらえる。
⑶ 特定の弁護士(5ちゃんねるが認めた弁護士)を通せば,原則として,削除してもらえる。
なお,上記⑶のルートは,弁護士からの請求であれば,基本的に削除されている模様。すなわち,削除に関する限り「5ちゃんねるが認めた」という言葉に意味はないと思われる(大抵の場合,どの弁護士でも同様の成果が得られる)。
2 開示請求(投稿者の特定)について
開示請求については,削除におけるような手順は公表されていない。また,ネット上にも,5ちゃんねるの開示に関する情報はあまりない(あるいは,古い情報しか掲載されていない)。なぜこのような状況になったかといえば,開示請求に関する窓口は,警察関係者と特定少数の弁護士にのみ開かれているからである。すなわち,「5ちゃんねるが認めた弁護士」という言葉は,開示請求においては依然生きている。「5ちゃんねるの記事消します」という広告は至る所で見かけるのに「5ちゃんねるの投稿者を特定します」という広告をあまり目にしないのは,こういうところに原因がある。
3 結論
以上のような状況を踏まえ,現時点における削除および開示請求の最善手は以下のようになる。
- 削除については,削除要請をした経験のある弁護士に依頼すること。ただし,高額の費用設定をしている弁護士は避けた方が良い。5ちゃんねるへの削除要請はメールを送るだけの簡単な仕事である。そのような仕事に10万も20万も支払うのは割に合わない(削除件数が多い場合は別)。
- 開示(投稿者の特定)については,5ちゃんねるが認めた弁護士に依頼すること。それ以外の弁護士に依頼するよりも,早く,安く,確実に,手続きが進むからである(というか,そもそも,開示請求できるのは,5ちゃんねるが認めた弁護士だけである)。
なお,5ちゃんねるが認めた弁護士以外にも,開示案件を受任している弁護士はいる。そのような弁護士がどのように事件処理しているかというと,5ちゃんねるに関する部分だけ,認めた弁護士に外注している。このような手法は,認めた弁護士の数が少ない現状では合理的であるが,中間マージンが生じる分,依頼者の負担は重くなる。
サイバーアーツ法律事務所所属。早稲田大学商学部卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。インターネット関連事件を専門に受任している弁護士です。