グーグルマップにおける「一般読者の普通の注意と読み方」(2)

[プロバイダの主張例]
 一般の閲覧者は一つのロコミだけを読むのではなく、多数のロコミを読み、それらを比較総合することによってロコミ対象者に対する評価を形成するから、原告について良いロコミもあるという事実は、一般の閲覧者が本件記事を、玉石混交のうちの一記事と相対化して評価し、原告が反社会的勢力と繋がりがあると鵜呑みにしないことを裏付ける事実である。

[反論例]
「本件記事のほかに、原告に好意的な口コミがあること」は本件記事による不法行為の成否と関連性がない。本件記事の閲覧者がそれら口コミを読むとは限らないからである。水戸地方裁判所龍ケ崎支部平成28年8月19日判決も、同一の電子掲示板に、1分未満の間隔を置いて投稿された同一内容の記事について「本件掲示板を見た者が、本件書き込みを見る前に投稿番号×××の書き込み(※先行して投稿された記事)を見ているとは限らない」ことを理由に、後続記事による社会的評価の低下を認めている。

【関連裁判例】
「被告は、ロコミについては、多数のロコミの総合評価により対象者の評価が形成されるから、本件記事によって原告の社会的評価は低下しないし、低下したとしても受忍限度内である旨主張する。しかし、本件記事自体による原告の社会的評価の低下と他のロコミの存在は関連性がないというべきであり、また、本件記事は、単に投稿者の感想や評価が記載されているというものではなく、原告が反社会的勢力と繋がりがあるという事実を摘示しているのであるから、これによる社会的評価の低下が受忍限度内といえないことは明らかというべきである。」(東京地方裁判所令和5年7月4日判決[5ページ15~22行目])