インターネット上の誹謗中傷について、投稿者に対する損害賠償が裁判でいくら認められているのかを、判決の一覧で示します。当事務所の裁判例データベースに収録した損害賠償の裁判例257件のうち、投稿者本人に支払を命じた判決77件を、認容額の内訳と事案の要点とともに掲載しています。
「慰謝料の相場」として語られる数字は、根拠が示されないことが多いものです。この一覧は、各判決の主文と理由から読み取った金額だけを載せ、それぞれの判決のページにリンクしています。金額は事案によって大きく異なるので、似た事案の判決を見ることが、見通しを立てる近道になります。
要点
- 投稿者に支払を命じた77件の認容額(慰謝料、弁護士費用、投稿者の特定にかかった費用の合計)の中央値は57万2000円です。4件に1件は24万円以下、4件に1件は118万円を超えています。
- 匿名掲示板の事案は中央値が100万円で、X(旧Twitter)の事案(中央値35万円)より高くなっています。掲示板の事案では、投稿者を特定するための手続費用が損害として上乗せされることが多いためです。
- 投稿者の特定にかかった費用の扱いを判断した判決は、裁判例データベースの26件と横浜地方裁判所令和6年5月24日判決を合わせて27件あり、全額を認めたものが12件、一部を認めたものが9件、独立の項目とせず弁護士費用や慰謝料の中で考慮したものが5件、認めなかったものが1件です。詳しくは「投稿者の特定にかかった費用は取り戻せるか」にまとめています。東京高等裁判所令和2年1月23日判決は、発信者情報開示の訴訟の弁護士報酬は「特段の事情のない限り全額」が損害になるとしました。
- 投稿者が訴えられた事件のうち、請求が全部棄却された判決も15件あります。真実性や意見・論評として違法性が否定された例、投稿が本人を指すと認められなかった例です。
1. 表の見方
認容額 判決が投稿者に支払を命じた金額の合計です。慰謝料(法人の場合は無形損害)、相手方の弁護士費用の一部、投稿者の特定にかかった費用を含みます。原告が複数の場合は合計し、控訴審の判決は維持された額を載せています。投稿以外の行為(横領、住居侵入など)の賠償が含まれる判決は、投稿に関する部分だけを載せ、その旨を注記しています。横浜地方裁判所令和6年5月24日判決は裁判例データベースに未収録のため、当事務所の取扱事件のページにリンクしています。
うち投稿者の特定にかかった費用 発信者情報開示の仮処分や訴訟にかかった弁護士費用などを、損害として認めたかどうかです。「全額」は支出した額の全部を認めたもの、「一部」は減額したもの、「—」は判決がこの費用に触れていないものです。
事案 各判決のページに載せている一行の要約です。詳しい事実関係と判決理由の骨子はリンク先にあります。判決の日付の古い順ではなく、新しい順に並べています。
2. 投稿者に対する損害賠償を認めた判決77件
| 判決・媒体 | 認容額 うち投稿者の特定にかかった費用 | 事案 |
|---|---|---|
| 東京高裁令和7年6月26日 X(Twitter)、YouTube、note | 55万円 | ライターがステルスマーケティングを行っていると述べるSNS等の投稿は事実の摘示に当たり、謝罪に伴う賠償金放棄の投稿も債務免除ではないとして、削除と損害賠償を認めた原判決を維持した |
| 東京高裁令和7年1月22日 X(Twitter) | 10万円 | 団体を差別的で悪質だと断定するSNS投稿は意見論評に当たるが、理由を示さず否定的・断定的な表現で人身攻撃に及び論評の域を逸脱したとして、原判決を変更し削除と慰謝料10万円を命じた |
| 横浜地裁令和6年5月24日 X(Twitter)、ブログ | 377万5000円 本人327万5000円、母50万円 特定費用: 16万5000円(全額) | 6年以上にわたりX(Twitter)とブログに繰り返された俳優とその母への投稿について、専ら公益を図る目的は認められないとして名誉毀損・侮辱を認め、本人について1,000件超の投稿を不法行為とし、開示訴訟等の弁護士費用を含む賠償を命じた(当事務所の取扱事件) |
| 千葉地裁令和6年9月26日 X(Twitter)、LINE | 80万円 投稿部分の慰謝料。横領の賠償は除く | 歯科医師が元従業員の夫のXの投稿等と元従業員の金銭領得を訴えた事案で、原告と分かる投稿の名誉毀損と金銭領得を認め、氏名のない初期の投稿と2人だけのLINEは否定した |
| 東京地裁令和6年8月6日 ブログ | 124万3000円 特定費用: 33万円(全額) | 同じ競技の選手による匿名コメントは公益目的を欠くとして名誉毀損を認め、開示訴訟費用を含む賠償を命じる一方、開示請求や関係先への周知を理由とする反訴は棄却した |
| 東京地裁令和6年7月18日 | 28万円 | 空手道場主を名指しせず、門下生に後遺症の残る大けがを負わせたとするSNS投稿について、本人を特定できるとし、名誉毀損・不正競争・名誉感情侵害により28万円の賠償を命じた |
| 東京地裁令和6年4月23日 X(Twitter) | 110万円 | ワクチンの副作用で虚偽を述べたとする投稿は名誉毀損に当たるとして、医師で作家の投稿者に110万円の賠償と投稿2件の削除が命じられた |
| 大阪地裁令和6年2月22日 ホストラブ | 24万円 特定費用: 一部 | 匿名掲示板で、第三者への感染症の感染源が原告だとする噂に沿った短い投稿2件を名誉毀損と認め、噂が既に広まっていたことなどから賠償額を各12万円とした |
| 東京地裁令和6年2月8日 掲示板 | 157万5000円 特定費用: 43万2000円(全額) | 電子掲示板に医師の顔写真と犯罪行為を摘示する記事を投稿した者に対し、名誉毀損を認め、投稿者特定の費用全額を含む157万5000円の賠償を命じ、消滅時効の主張を退けた |
| 東京地裁立川支部令和5年12月13日 電子メール、X(Twitter) | 121万円 | 著作権侵害だと主張して相手の関係先の会社へメールを送りSNSに投稿した行為について、会社宛てメールの公然性を認め、名誉毀損と業務妨害による損害賠償の一部が認められた |
| 東京地裁令和5年7月18日 X(Twitter) | 22万円 | 国会議員が民事判決後に原告を非難した2件の投稿のうち、行為を犯罪と評した投稿は不法行為に当たらず、侮辱的な呼び方を含む投稿は論評の域を逸脱するとして削除と賠償が命じられた |
| 東京地裁令和5年7月10日 X(Twitter) | 10万円 | X(Twitter)の3件の投稿のうち、薬を飲ませたと断じた投稿だけが真実と信じる相当な理由を欠くとされ、その削除と10万円の賠償が命じられた |
| 東京地裁令和5年3月8日 ウェブサイト、SNS | 11万円 | 前科に触れたネット記事について、立場を利用した点の真実性と公益目的を認める一方、仕事上の利益を見返りにした点は真実と認めず、一部削除と11万円の賠償を命じた |
| 東京地裁令和5年1月27日 X(Twitter) | 16万5000円 | 報道関係の仕事をしている男性の性加害を取り上げたツイッター上の9件の投稿のうち、真実性等が認められない3件について、投稿者に16万5000円の賠償と該当部分の削除が命じられた |
| 東京地裁令和5年1月23日 X(Twitter) | 35万円 | 国会議員であった投稿者のX(Twitter)上の6件の投稿のうち、裏付けのない事実を暗示した1件だけが名誉毀損とされ、35万円の賠償が認められ削除は否定された |
| 東京高裁令和4年11月10日 X(Twitter) | 143万円 | 性被害を公表した人を虚偽の告発者のように描くイラスト付きの投稿とコメントなしのリツイートに名誉毀損等の不法行為が認められ、リツイートの削除請求は退けられた |
| 東京高裁令和4年10月20日 X(Twitter) | 55万円 | 議員が控訴人やその擁護者を侮辱する投稿に繰り返し「いいね」を押した行為について、経緯や意図、影響力から許される範囲を超えた侮辱に当たるとして、名誉感情侵害の不法行為が認められた |
| 大阪高裁令和2年6月23日 X(Twitter) | 33万円 | 他人の投稿をコメントなしでリツイートした者が元の投稿の内容について名誉毀損の責任を負うかが争われ、裁判所は責任を認め、慰謝料等33万円の賠償を命じた原判決を維持した |
| 東京高裁令和2年1月23日 2ちゃんねる | 414万1687円 特定費用: 227万1687円(全額) | 掲示板での名誉毀損の賠償額が争われ、裁判所は発信者情報開示の弁護士費用は全額を損害と認めた一方、刑事告訴の費用は損害と認めず、賠償額を414万円余とした |
| 大阪地裁平成30年9月20日 X(Twitter) | 33万円 | 知事がXで別の自治体の知事の名を挙げた直後に、主語を示さずに党内の異論を封じる人物との論評を続けた投稿について、主語はその知事と認められ、前提事実の真実性も否定されて33万円の賠償が命じられた |
| 大阪高裁平成30年6月28日 まとめサイト、2ちゃんねる、X(Twitter) | 200万円 | まとめサイトに掲示板の投稿等を選んで加工・編集したブログ記事は独立した表現行為だとして名誉毀損・侮辱を認め、200万円の賠償を命じた原判決を維持した |
| 東京地裁平成30年1月10日 掲示板 | 145万円 特定費用: 50万円(一部) | 受験情報の掲示板に学習塾等を経営する会社についての投稿5件をした投稿者に対し、5件とも名誉・信用毀損の不法行為になるとして、投稿者の特定費用を含め145万円の賠償が命じられた |
| 東京地裁平成29年11月28日 2ちゃんねる、ホストラブ | 74万9000円 特定費用: 全額(額の記載なし) | 匿名掲示板に同僚が繰り返した投稿につき、プライバシー・名誉・名誉感情の侵害を認め、慰謝料に加え投稿者特定と削除の調査費用全額を損害とした |
| 大阪地裁平成29年11月16日 ブログ、2ちゃんねる、X(Twitter) | 200万円 | 掲示板の投稿を引用し加工してまとめたブログ記事の掲載が、引用元とは独立して原告の人格権を新たに侵害するとされ、運営者の損害賠償責任が一部認められた |
| 東京地裁平成29年11月7日 2ちゃんねる | 100万円 特定費用: 弁護士費用等の中で考慮 | 掲示板に過去の記事を複写して再び投稿した事案で、新たな読者が現れうるとして名誉毀損と名誉感情の侵害を認め、論評との主張や真実性の抗弁を退けて賠償を一部認めた |
| 東京地裁平成29年11月2日 ブログ、X(Twitter)、Facebook | 10万円 | ブログで、過去の書き込みを理由に原告を犯罪者のように扱った記事について、公共性は認めたが、主な目的は仕返しにあり公益目的ではないとして名誉毀損の責任を認めた |
| 東京地裁平成29年10月17日 X(Twitter) | 150万円 | 元従業員がツイッターで会社と役員の不正などを何度も投稿した事案で、なりすましの主張を退け、名称のない投稿も一連の流れから原告らを指すとして削除と賠償を命じた |
| 東京地裁平成29年9月15日 X(Twitter) | 11万円 | ツイッター上の呼び名を挙げて私生活上の事項に触れる内容を広めたツイートについて、原告と面識のある人には原告と分かるとして、名誉・プライバシー・名誉感情の侵害の賠償が一部認められた |
| 大阪地裁平成29年8月30日 SNS | 130万6000円 特定費用: 58万6000円(全額) | SNSで原告と同じアカウント名と顔写真を使って他の利用者を罵倒した投稿者に対し、名誉権と肖像権の侵害を認め、投稿者特定の費用全額を含む賠償を命じた |
| 大阪高裁平成29年6月19日 X(Twitter)、動画サイト、その他 | 77万円 | 動画配信・街頭宣伝・ツイッターでの発言による名誉毀損・侮辱について、団体と代表者に77万円の連帯支払を命じた原判決を維持し、相手方からの反訴も退けた控訴審判決 |
| 東京地裁平成29年3月24日 SNS、ブログ、X(Twitter)、電子メール、2ちゃんねる | 13万円 | SNSの限定公開の日記やブログで団体の代表らが中傷されたとされた事案で、限定公開でも公然性を認め、一部の投稿とブログ記事に名誉毀損を認めた一方、共謀は否定した |
| 東京地裁平成29年3月6日 ウェブサイト | 30万円 | ジャーナリストが同業者のサイト記事で暴力団組長と共謀して虚偽の陳述書を出したなどと書かれた事案で、共謀と密接交際の部分が名誉毀損とされ、削除と慰謝料が認められた |
| 東京地裁平成29年2月14日 2ちゃんねる | 60万円 特定費用: 5万円(一部) | 元同僚が掲示板に約3か月で19件書き込んだ事案で、勤務態度やストーカー行為を示す投稿は名誉毀損、障害に関する投稿はプライバシー侵害とされ、60万円の賠償が命じられた |
| 東京地裁平成29年1月16日 ウェブサイト | 11万円 | 会社の破産手続等に関するウェブサイトの記事につき、元代表者が運営者に損害賠償と削除を求め、真実性等を認める証拠がないとして、名誉を毀損する部分に限って認められた事案 |
| 東京地裁平成28年12月26日 ウェブサイト | 33万円 | 懲戒解雇された元従業員がウェブサイトに載せた会社批判の記述は名誉毀損とされ削除と賠償が認められたが、社内文書の掲載は秘密保持義務違反とされず、著作物に当たる1文書だけ削除が認められた |
| 東京地裁平成28年12月16日 掲示板 | 99万8919円 特定費用: 弁護士費用等の中で考慮 | 掲示板で投資詐欺への関与を指摘した書き込みについて、名誉・信用毀損と第三者との共同不法行為を認め、別訴での第三者の支払分を充当したうえで投稿者に賠償を命じた |
| 東京地裁平成28年12月15日 動画サイト | 15万6000円 | 講演会での挨拶や講演を無断でネット上にライブ配信した行為について、公表権侵害は否定されたが、公衆送信権の侵害が認められ、時事の事件の報道としての利用にも当たらないとされた |
| 東京地裁平成28年12月14日 掲示板 | 165万円 写真掲示部分の慰謝料と弁護士費用。住居侵入の賠償は除く | 配偶者だった被告が原告の性的な写真を無断で掲示板に掲示した行為と、別居後に原告宅へ無断で立ち入った行為について、裁判所は両方を不法行為と認め、賠償を命じた |
| 東京高裁平成28年12月5日 | 110万円 | 国会議員の行政官時代の無断欠席等を指摘するフェイスブック投稿について、氏名がなくても検索等で特定できるとして名誉毀損が認められ、110万円の賠償を認めた原判決が維持された |
| 大阪地裁平成28年11月30日 X(Twitter) | 30万円 | 講義中の大学教員の様子を撮影した画像に、実際にはない発言があったとするコメントを付けてツイッターで公開した学生に、名誉毀損による損害賠償の一部が命じられた事例 |
| 東京地裁平成28年11月24日 X(Twitter)、ブログ、ウェブサイト | 57万2000円 | ある報告者に根拠のない情報を提供したとする投稿や、駆除を呼びかける投稿について、名誉毀損と名誉感情の侵害が認められ、賠償の一部の支払が命じられた |
| 東京地裁平成28年10月25日 YouTube、動画サイト | 20万円 | 動画で公開された対談番組で補助金を受ける企業を疑った発言について、多くの論評は違法性が否定され、裏付けを欠く一部の発言に賠償を命じ、動画の削除や謝罪文は認めなかった |
| 東京地裁平成28年9月29日 電子メール | 30万円 | メールマガジンで、団体とその運営に関わる個人を詐欺的だと批判した記事について、一部の記載は相当の理由等で責任を否定したが、根拠を欠く断定や伝聞の記載に名誉毀損を認めた |
| 東京地裁平成28年8月25日 電子掲示板、Facebook、電子メール | 100万円 | 元顧客が本名などをネット上に投稿して中傷を続けた行為は、信用毀損と名誉・プライバシー権の侵害に当たるとされ、慰謝料と人格権に基づく差止めが認められた |
| 東京地裁平成28年8月5日 掲示板 | 120万円 特定費用: 10万円(一部) | 飲食フランチャイズ本部と経営者が元従業員による掲示板への29件の投稿を訴えた事案で、一部は真実性等により免責としつつ、名誉毀損とプライバシー侵害で計120万円の賠償を命じた |
| 東京地裁平成28年7月26日 | 110万円 | 国会議員の官僚時代の勤務態度を通称で述べたフェイスブック投稿について、原告を指すと認め、再伝聞のみでは真実相当性もないとして削除と110万円の賠償を命じた |
| 東京地裁平成28年7月21日 Yahoo!知恵袋 | 62万1060円 特定費用: 全額(額の記載なし) | Q&Aサイトの回答に別の記事へのリンクを付けた投稿につき、リンク先の内容も含めて会社への名誉毀損を認め、投稿者特定に要した弁護士費用も損害に含めた判決 |
| 大阪高裁平成28年7月14日 ウェブサイト、YouTube | 100万円 | 元弟子がネットで配信した故人の妻に関する発言について、私生活の事実も公共の利害に当たり得るとし、6発言中3発言は真実相当性で免責、慰謝料を100万円とした |
| 東京地裁平成28年7月1日 2ちゃんねる | 169万円 特定費用: 54万円(全額) | 発信者を特定した後の損害賠償請求で、掲示板の匿名投稿による名誉毀損の慰謝料は100万円とされ、開示手続の弁護士費用54万円も全額が損害と認められた |
| 東京地裁平成28年6月21日 電子掲示板 | 40万円 特定費用: 弁護士費用等の中で考慮 | 電子掲示板で弁護士の前科や業務上の行為について虚偽の内容を示す趣旨の書込みを繰り返した投稿者に対し、名誉毀損を認め、具体性の乏しさや投稿者特定の負担を考慮して慰謝料を一部認めた |
| 東京地裁平成28年6月2日 ブログ、電子メール | 11万円 | 対立する個人間のブログ記事等について、閲覧者が原告と同定できる記事による名誉毀損・侮辱と嫌がらせのメール・脅迫を一部認め、同定できない記事と削除・差止め・謝罪広告の請求は退けた |
| 東京地裁平成28年6月2日 ウェブサイト | 55万円 特定費用: 弁護士費用等の中で考慮 | 個人が他人の雇用に圧力をかけて退職させたとするウェブサイト記事について、社会的評価を下げる事実の摘示と認め、慰謝料45万円と弁護士費用10万円の賠償を命じた |
| 東京地裁平成28年4月22日 | 11万円 | 取引先の代表者がFacebookに取引中止と支払上の問題への注意を促す投稿をした件で、閲覧者が限られるとの反論を退けて名誉毀損を認め、会社にも責任を負わせた |
| 東京地裁平成28年4月11日 2ちゃんねる | 55万円 | 元部下が2ちゃんねるに会社の管理職である原告のハラスメントや経費の私的流用を書き込んだ事案で、名誉毀損と名誉感情の侵害を認め、慰謝料等55万円の支払を命じた |
| 東京地裁平成28年4月8日 電子メール、ブログ、X(Twitter)、電子掲示板 | 22万円 | なりすましメールやブログ、掲示板など9件の表現行為で賠償を求めた事案で、発信者情報開示で被告の氏名が判明した1件だけを被告又はその意を受けた者の発信と推認し、22万円を認めた |
| 東京地裁平成28年3月30日 2ちゃんねる、電子掲示板 | 118万5800円 特定費用: 全額(額の記載なし) | 電子掲示板の投稿者に名誉毀損の損害賠償を求めた事案で、多くの表現が社会的評価を下げるとされ、投稿者特定の費用と慰謝料などの一部が認められた |
| 東京地裁平成28年3月17日 2ちゃんねる、X(Twitter) | 22万円 | 掲示板やツイッターで氏名等を示し罵倒や危害の示唆を重ねた投稿者に対し、プライバシー侵害・侮辱・脅迫を理由に賠償を命じ、名誉毀損と投稿者への削除請求は否定した |
| 東京地裁平成28年2月17日 2ちゃんねる | 20万円 特定費用: 8万円(一部) | 社長が従業員と性的関係を持っているとする掲示板の書込みで会社の社会的評価が低下したとして投稿者に賠償を命じ、損害項目ごとに判断して20万円を認めた |
| 東京地裁平成28年2月9日 2ちゃんねる | 198万3850円 特定費用: 全額(額の記載なし) | 匿名掲示板で個人を中傷した投稿者らに対し、投稿者の特定と記事削除のために支払った弁護士費用は全額を損害と認め、慰謝料は掲示板の信頼性の低さなどから低めとした |
| 東京地裁平成28年1月27日 ブログ、その他 | 300万円 | 原告らが競技団体の職員を閉じ込めて脅したとするブログ記事と記者会見での発言が名誉毀損とされ、真実性も真実と信じた相当の理由も否定されて慰謝料が認められた |
| 東京地裁平成28年1月27日 掲示板、爆サイ.com、ブログ、文書・ビラ | 165万円 | 代理店等へのファックスと会社事務所への繰り返しの電話、掲示板の書込みについて、業務妨害と会社・代表者の名誉・信用の毀損を認め、逸失利益等の損害は否定した |
| 東京地裁平成27年6月16日 ウェブサイト | 30万円 | 個人が開いたホームページで訴訟の相手方を侮辱した文言について、名誉毀損は否定し名誉感情の侵害として削除と慰謝料を認め、サーバ領域を貸す会社への削除請求は退けた |
| 東京地裁平成27年6月11日 ブログ | 55万円 | 別件訴訟の訴状の文面をブログに掲載し、宗教団体の幹部職員が重大な犯罪を計画したと摘示した事案で、裁判の公開を理由とする正当化を否定し、文言の削除と損害賠償を認めた判決 |
| 大津地裁彦根支部平成27年1月22日 掲示板 | 195万円 特定費用: 弁護士費用等の中で考慮 | 掲示板で実名や住所を明かし犯罪を示唆するなどした投稿について、裁判所は否認された投稿も含め投稿者の責任を認めて195万円の賠償を命じ、回線契約者である同居の父の責任は否定した |
| 東京地裁平成27年1月21日 ウェブサイト | 109万8000円 | 弁護士の被害者の会を名乗るサイトについて、身柄拘束中の者を含む被告2名の共謀を認めて日額2000円の慰謝料を認め、レンタルサーバー事業者の本人確認義務と削除義務は否定した |
| 東京地裁平成26年11月28日 ブログ | 62万7600円 特定費用: 一部 | 匿名ブログで、過去の刑事事件にかかわる私信を公開されるなどした個人が賠償を請求した事案で、投稿者を被告と認定し、プライバシー侵害と名誉毀損を認めた |
| 東京地裁平成26年9月29日 ブログ | 110万円 | ブログで会社とその役員が詐欺に関わるとの趣旨の投稿をされた事案で、以前の投稿の開示結果などから投稿者を被告と認め、名誉と信用の毀損を認めた |
| 東京地裁平成26年9月24日 SNS | 110万円 | 診療所の医師が元従業員らを横領容疑で解雇したとSNSに書いた事案で、裁判所は使い込みの主張の大半を退け、真実性の証明がないとして名誉毀損の賠償を命じた |
| 東京地裁平成26年8月18日 SNS | 11万円 | SNSのトピックでの元バンド仲間の書込みについて、年齢詐称や暴力的な性格を摘示した1件だけを名誉毀損と認めて11万円の賠償を命じ、他の書込みと謝罪文掲載の請求は退けた |
| 東京地裁平成26年7月17日 電子掲示板 | 111万8700円 特定費用: 51万8700円(全額) | 掲示板に容姿・出自・性的な事柄で個人を中傷する記事を5回投稿した者に対し、プライバシー侵害と侮辱を認め、開示手続の費用全額を含む111万円余りの賠償が命じられた |
| 東京地裁平成26年6月19日 SNS | 11万円 | 妻がSNSに夫から暴力を受けたとする夫婦間の出来事を書き込んだ事案で、閲覧者が限られていても名誉毀損に当たるとして、11万円の賠償を命じた |
| 東京地裁平成25年12月20日 ブログ | 30万円 | 個人のブログで講座の主催者を詐欺的と書いた記載について、体験に基づく具体的な内容で読者が信用しないとまではいえないとして名誉毀損等を認め、会社の請求は棄却した |
| 東京地裁平成25年12月11日 電子掲示板 | 12万3629円 特定費用: 一部 | ブログで私生活を公開する個人を批判した掲示板の投稿は許される範囲の意見等とされたが、過去の書き込みを感想を付けて再掲した投稿は名誉毀損に当たるとされた |
| 東京地裁平成25年12月6日 電子掲示板 | 55万円 特定費用: 否定 | 掲示板の投稿者を店舗の利用者名簿の筆跡等から被告と推認し、その投稿へのリンクを付けた別の投稿もリンク先の内容を含むとして名誉毀損を認め、特定費用の賠償は否定した |
| 東京地裁平成25年12月2日 電子掲示板 | 30万円 特定費用: 5万円(一部) | 電子掲示板の記事で名誉を傷つけられた個人が回線契約者と投稿者を訴え、投稿者に慰謝料・弁護士費用・調査費用の計30万円の支払が命じられ、契約者への請求は棄却された |
| 東京地裁平成25年9月25日 電子掲示板 | 80万円 特定費用: 一部 | 金貨の買取価格をめぐる紛争の顧客が販売会社の名を掲げた掲示板スレッドに書き込んだ記事3件のうち2件について、名誉毀損が認められ80万円の賠償が命じられた |
| 東京地裁平成25年7月19日 動画サイト、電子メール | 275万円 | 元家主が元入居者の医師の私生活や家賃滞納を述べる動画を氏名・勤務先・顔写真と併せて投稿した行為が名誉毀損とプライバシー侵害に当たるとされ、275万円の賠償が命じられた |
3. 金額を左右する要素
一覧を通して見ると、金額に影響している要素は次のようなものです。
- 投稿の内容 犯罪行為の摘示、性的な中傷、顔写真や実名・住所の掲載を伴うものは高くなります。一方、短い投稿1件や、複数の投稿のうち1件だけが違法とされた事案は10万円前後にとどまっています。
- 回数と期間 同じ相手に対して数か月にわたり繰り返した投稿(19件、29件など)は、慰謝料だけで50万〜100万円になっています。6年以上にわたる1,000件超の投稿では、327万5000円が認められています(横浜地方裁判所令和6年5月24日判決)。
- 投稿者の立場 国会議員、知事、フォロワーの多い発信者など影響力のある投稿者の事案では、1件の投稿でも33万円から110万円が認められています。
- 被害者が法人の場合 法人には慰謝料ではなく「無形損害」が認められ、10万円から110万円まで幅があります。
- 特定にかかった費用 次の節のとおり、全額が認められるか一部にとどまるかで、総額が数十万円単位で変わります。
4. 投稿者の特定にかかった費用の扱い
匿名の投稿者に損害賠償を求めるには、その前に発信者情報開示の手続で投稿者を特定する必要があり、弁護士費用がかかります。この費用を投稿者に請求できるかについて、判決の扱いは分かれています。
全額を認めた判決 東京高等裁判所令和2年1月23日判決は、開示訴訟の弁護士報酬は特段の事情のない限り全額が損害になるとして、開示と削除の費用227万1687円を損害と認めました(刑事告訴の費用は認めませんでした)。東京地方裁判所令和6年2月8日判決(43万2000円)、大阪地方裁判所平成29年8月30日判決(58万6000円)、東京地方裁判所平成28年7月1日判決(54万円)、同平成26年7月17日判決(51万8700円)、横浜地方裁判所令和6年5月24日判決(16万5000円)も、特定にかかった弁護士費用の全額を認めています。
一部だけ認めた判決 東京地方裁判所平成25年12月2日判決は50万5500円の支出のうち5万円、同平成29年2月14日判決は73万5000円のうち5万円、同平成28年2月17日判決は74万4000円のうち8万円だけを損害と認めました。大阪地方裁判所令和6年2月22日判決は、特定の費用を本訴の弁護士費用と一括して慰謝料の2割に限定しています。
認めなかった判決 東京地方裁判所平成25年12月6日判決は、支出の立証がないことに加え、開示手続の費用は開示手続の相手方に負担を求めるべきものだとして、投稿者への請求を認めませんでした。
どの扱いになるかは、支出を証明する資料の有無、手続の必要性、投稿の悪質性などによります。特定にかかった費用を請求する場合は、仮処分・開示訴訟の委任契約書と領収書を保管しておくことが前提になります。
5. 請求が棄却された例
投稿者が訴えられた100件のうち、請求が全部棄却された判決は15件です。摘示した事実が真実と認められた例、公的な立場にある人への批判が意見・論評の範囲内とされた例、投稿が原告を指すと閲覧者に分からないとされた例などです。損害賠償を請求する側も、請求される側も、投稿の内容が名誉毀損などの要件を満たすかどうかが出発点になります。
6. 一覧を使うときの注意
- 一覧の金額は判決で認められた額です。示談で解決する場合の金額は、手続の費用や時間を踏まえて当事者が決めるもので、判決の額とは異なります。
- 一覧は投稿者本人に対する判決に限っています。サイト運営者や検索事業者に対する損害賠償は、ほとんどの判決で認められていません。
- 不法行為による損害賠償の請求権は、加害者と損害を知った時から3年で時効にかかります。投稿者の氏名・住所が開示された時が起算点になることが多いので、開示後は早めに請求する必要があります。
7. ご相談について
投稿者に対する損害賠償の請求をご検討の方、投稿者として請求を受けた方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。費用についてはFeeをご覧ください。損害賠償の裁判例は裁判例データベースで、媒体や年ごとに検索できます。
関連する解説
- 誹謗中傷の投稿者特定にかかった費用は取り戻せるか|判決26件の集計
- ネット上の誹謗中傷の刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)の流れと、投稿者の特定・損害賠償との関係
- ネット上の投稿について損害賠償や示談金を請求された方へ(請求額と判決で認められた額の実例、争える点、示談と訴訟)
資料
- 当事務所の裁判例データベース収録の損害賠償に関する裁判例257件(2026年10月18日時点。投稿者本人に対する判決101件、うち認容77件・棄却15件・その他9件)
- 東京高等裁判所令和2年1月23日判決(令和元年(ネ)第3668号。開示訴訟の弁護士報酬は特段の事情のない限り全額が損害)
- 東京地方裁判所平成25年12月6日判決(平成24年(ワ)第15320号。特定費用の賠償を否定)
- 横浜地方裁判所令和6年5月24日判決(令和3年(ワ)第3425号。朝日新聞2024年5月24日で報道)
本記事で取り上げた裁判例には、当事務所が代理人として関与した事件が含まれます。

サイバーアーツ法律事務所 弁護士(東京弁護士会、2007年登録)。インターネット上の権利侵害に関する事件のみを扱う。