5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の誹謗中傷の投稿者を特定する方法と削除

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、匿名で書き込める日本最大の電子掲示板です。会社名や個人の活動名を題名にしたスレッドで中傷が続く、勤務先のスレッドで従業員が名字だけで揶揄される、過去の逮捕の報道が転載されて残り続ける、といった被害が起きています。投稿者に責任を問うには投稿者を特定する必要があり、そのための手続が発信者情報開示請求です。投稿を消すには、運営者に対する削除請求を行います。

この記事では、5ちゃんねるの投稿について投稿者を特定する場合の仕組みと流れ、期間の目安、開示が認められる基準、認められやすい投稿と認められにくい投稿、裁判例、削除請求、特定後にできることを整理します。当事務所の裁判例データベースには、5ちゃんねると2ちゃんねるに関する裁判例を312件収録しており、X(旧Twitter)に次いで多い媒体です。掲示板に固有の論点は、投稿が「誰のことを書いたものか」をめぐる同定可能性の争いが非常に多いことです。

要点

  • 5ちゃんねるは、X や Instagram と違い、投稿ごとにIPアドレスと日時を記録しています。運営者からその開示を受け、接続プロバイダに契約者の氏名・住所の開示を求めるのが基本の流れです。裁判例312件のうち289件は、この接続プロバイダに対する請求です。
  • 掲示板の投稿には氏名が書かれていないことが多く、スレッドの題名、前後の投稿、レスアンカー(返信先の表示)から誰を指すかが判断されます。名字だけ、活動名だけでも同定が認められた例がある一方、約1000件の投稿があるスレッドで本人に向けられたと認められなかった例もあります。
  • 裁判例312件のうち開示が認められたものは269件、棄却は40件です。棄却の理由は、同定可能性がない、意見や感想にとどまる、言い合いの中の投稿で侮辱の限度を超えない、公益性があり真実でないことの立証がない、の4つにほぼ集約されます。
  • 過去の逮捕の報道を転載した投稿については、逮捕歴を公表されない利益が優越するとして、掲示板の運営者に削除を命じた判決があります。

1. 5ちゃんねると2ちゃんねる

2ちゃんねるは2014年に運営の内部対立で分裂し、2ch.net と 2ch.sc の2つが併存するようになりました。2ch.net は2017年10月にフィリピンの Loki Technology, Inc. に譲渡されて5ちゃんねる(5ch.net)に名称を変え、2ch.sc は別の会社が5ちゃんねるの投稿を複製したうえで独自の書き込みも受け付ける形で続いています。この記事で「5ちゃんねる」と書く場合、特に断らない限り5ch.net を指します。2ch.sc に独自に書き込まれた投稿については、2ch.sc の運営者を相手に手続をとることになります。

運営者が外国法人であることから、削除や投稿者の特定ができないと思われがちですが、運営者は日本の裁判所の決定に従う姿勢をとっており、国内のサイトと同様に削除と開示の手続が可能です。

2. 投稿者を特定する手続の流れ

第1段階:運営者からIPアドレスの開示を受ける 5ちゃんねるは、投稿ごとに投稿時のIPアドレスとタイムスタンプを記録しています。X や Instagram のようにログイン時の記録しかない「ログイン型」ではないため、どのログインで投稿されたかという争いは生じません。運営者は、弁護士からの請求に応じて投稿のIPアドレスと日時を開示することが多く、裁判所の決定までは要しないのが通常です。

第2段階:接続プロバイダから契約者の氏名・住所の開示を受ける 開示されたIPアドレスを、投稿の日時に割り当てていた接続プロバイダ(携帯電話会社、固定回線の事業者、格安SIMの事業者など)に対して、契約者の氏名・住所の開示を求めます。発信者情報開示命令の申立て、または発信者情報開示請求訴訟によります。接続プロバイダは、投稿者(契約者)に意見照会をしたうえで、開示に同意しなければ裁判所の判断を待ちます。

接続プロバイダの通信記録は数か月程度で消去されることが多く、記録が消えると特定はできなくなります。東京地方裁判所令和3年5月19日判決は、接続プロバイダが通信記録を消去していた事案で開示請求を退け、プロバイダに記録を保全する義務はなく、消去のおそれがあるなら消去禁止の仮処分を申し立てるべきだったとしています。投稿に気づいてから接続プロバイダの手続に入るまでの時間が、結果を左右します。

契約者が「自分は投稿していない」「回線はフリーWi-Fiとして不特定の人に使わせている」と回答した場合でも、裏付けがなければ開示は命じられます。東京地方裁判所令和5年3月14日判決は、フリーWi-Fiとして使っているとの回答について、真偽を裏付ける証拠がなく、契約者の情報と利用客の情報を組み合わせて投稿者を特定できる可能性もあるとして、開示を命じました。格安SIMのように他社の回線を借りて接続サービスを提供する事業者(MVNO)も、開示請求の相手方になります(同令和4年5月19日判決)。

3. 期間の目安

運営者からのIPアドレスの開示は早く、数日から1週間程度が目安です。接続プロバイダに対する手続を含めると、投稿者の氏名・住所が分かるまで1〜3か月程度を見ておく必要があります。接続プロバイダの記録の保存期間の関係で、投稿から時間が経つほど特定は難しくなります。

4. 開示が認められる基準

発信者情報の開示が認められるには、①権利侵害の明白性(投稿によって名誉権などの権利が侵害されたことが明らかであること)と、②開示を受けるべき正当な理由が必要です。5ちゃんねるの事件で実際に争点になるのは、主に次の点です。裁判例312件のうち226件で同定可能性が争われており、掲示板に特有の最大の争点です。

同定可能性:スレッドの題名と前後の投稿 掲示板の投稿には氏名が書かれていないことが多く、投稿単体では誰のことか分かりません。裁判所は、スレッドの題名、前後の投稿、レスアンカーをあわせて、一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準に判断します。会社名を題名にしたスレッドの投稿は会社についての投稿と認められ(東京地方裁判所令和3年2月12日判決)、勤務先の会社名のスレッドで名字だけを書いた投稿も、先行する投稿との話題の連続や名字が珍しいことから、その営業所に勤める本人を指すと認められました(同令和4年2月25日判決)。作品名も作者名も書かれていない投稿が、直前の投稿が特定の漫画を話題にしていたことから、その作者に向けられたものと認められた例もあります(同令和4年7月15日判決)。

一方、約1000件の投稿があるスレッドで、氏名もアカウント名も書かれていない19件の投稿について、多数の者が入り乱れて投稿している中で本人に向けられたとは認められないとして棄却された例(同令和5年1月26日判決)、社長の氏の読みだけが書かれ、直前の投稿へのレスアンカーもない投稿について、具体的な事実を示さないとして棄却された例(同令和2年6月17日判決)があります。

同定可能性:活動名・ハンドルネーム 本名ではなく活動名で活動している人への投稿は、その活動名が本人と結び付いて知られているかが問題になります。SNS で使う活動名を挙げて容姿を揶揄した投稿は、本人を指すと認められました(東京地方裁判所令和6年2月22日判決)。一方、ごく少数しか本人と知らないハンドルネームへの投稿は、社会において誰に向けられたものか特定できないとして名誉毀損が否定され、侮辱の程度も限度内とされました(同令和3年10月29日判決)。

侮辱の限度 事実を書かずに罵る投稿は、「社会通念上許される限度を超える侮辱」にあたる場合に名誉感情の侵害として開示が認められます。話し方を障害と結び付けて揶揄した投稿(同令和4年4月25日判決)、従業員の容姿を順位付けした投稿(同令和4年2月25日判決)は限度を超えるとされました。一方、本人も相手を罵り挑発する言い合いの中でされた投稿(同令和5年6月30日判決)、推測や悪態、言い争いにとどまる投稿(同令和5年9月7日判決)、ラーメン店の味や接客を悪く評した投稿(同令和2年6月9日判決)は、限度を超えないとされました。

意見・論評と真実性 会社の労働環境のように公共の利害に関する事実を書いた投稿は、公益目的がうかがわれる場合、請求する側が「真実でないこと」を立証する必要があります。有給休暇を取りにくいとする投稿について、社会的評価の低下は認めつつ、真実でないことの立証がないとして棄却した例があります(同令和3年2月12日判決)。逆に、会社名と代表者名を挙げて労働基準法違反などを書いた投稿について、真実と認める証拠がなく、投稿者自身の書面にも一部が事実と違うとの記載があったとして、開示を命じた例もあります(同令和4年7月20日判決)。

リンクを貼った投稿 他のサイトの記事へのリンクを貼っただけの投稿は、リンク先の内容を自ら摘示したものとは同視できないとして棄却された例(同令和4年2月16日判決)と、リンク先の記事を自分の表現として取り込んだものとして開示が命じられた例(同令和4年1月28日判決)があります。投稿の文言や文脈によって結論が分かれます。

5. 開示が認められやすい投稿と認められにくい投稿

裁判例312件のうち、開示が認められたものは269件(一部認容を含む)、棄却されたものは40件です。認められた例と棄却された例を見ると、次の傾向があります。

認められやすい投稿

  • 会社名や本人の名前・活動名を題名にしたスレッドで、犯罪への関与、不正、法令違反などの具体的な事実を書いた投稿
  • 勤務先のスレッドで、従業員を名字や呼び名で指して容姿や私生活を揶揄する投稿
  • 障害や病気と結び付けた侮辱、性的な中傷、顔写真の合成など、人格攻撃にあたる投稿
  • 公表していない本名、住所、勤務先、電話番号、受験歴などの私生活上の事実を書いた投稿
  • 本人の写真や作品を無断で転載した投稿

認められにくい投稿

  • 氏名も活動名も書かれておらず、スレッドの流れからも本人を指すと分からない投稿
  • 本人と結び付いていることがごく少数にしか知られていないハンドルネームへの投稿
  • 味、接客、作品の出来など、具体的な根拠を示さない感想や評価にとどまる投稿
  • 本人も相手を罵っている言い合いの中でされた投稿
  • 会社の労働環境など公共の利害に関わる事実で、真実でないことを立証できない投稿
  • 接続プロバイダの通信記録がすでに消去されている投稿

6. 裁判例

当事務所の裁判例データベースには、5ちゃんねるに関する裁判例164件と2ちゃんねるに関する裁判例148件を収録しています(2026年10月現在)。本記事で触れた裁判例は次のとおりです。各リンク先に、事案の概要と判決理由の骨子があります。

7. 投稿の削除請求

運営者への削除要請 5ちゃんねるには削除の手順が定められており、メールで削除を要請できますが、必ず応じてもらえるわけではありません。弁護士からの要請には応じられることが多く、裁判所の削除の仮処分決定があれば原則として削除されます。

逮捕歴に関する投稿 5ちゃんねるにはニュース系の板が多く、過去の逮捕の報道を転載した投稿が残り続ける相談が多いのが特徴です。東京地方裁判所令和5年6月29日判決は、逮捕の報道を転載した投稿と逮捕の事実を前提に個人情報を書いた投稿について、示談と不起訴処分で刑事事件が終わり時間が経過したことなどから、逮捕歴を公表されない法的利益が優越するとして、掲示板の運営者に削除を命じました。詳しくは「逮捕歴・前科に関するネット上の記事や投稿の削除について」をご覧ください。

削除と開示の順序 投稿者に損害賠償を求めるつもりがある場合、先に投稿が削除されると、開示請求に必要な証拠が失われます。投稿のURL、スレッドの題名、前後の投稿を含む表示画面、投稿日時を保存した上で、開示請求を先行させるか、削除と開示を並行して進めるかを検討します。証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。

8. 投稿者を特定した後にできること

投稿者が特定できた後は、損害賠償請求(示談交渉、または訴訟)、投稿者自身による投稿の削除と再投稿しないことの約束、悪質な場合の刑事告訴(名誉毀損罪、侮辱罪など)が考えられます。掲示板の投稿者に対する損害賠償では、慰謝料に加えて投稿者の特定にかかった弁護士費用が損害として認められることが多く、東京高等裁判所令和2年1月23日判決は開示手続の費用227万1687円を含む414万1687円の賠償を命じています。投稿者に対する判決77件の認容額は「ネット上の誹謗中傷の慰謝料・損害賠償額の一覧」にまとめています。

9. ご相談について

5ちゃんねるの投稿の削除や投稿者の特定をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。費用についてはFeeをご覧ください。

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