YouTube の誹謗中傷動画・コメント・無断転載の投稿者を特定する方法と削除

YouTube では、特定の人を名指しして犯罪や不正を決めつける動画、元従業員を名乗って会社の内情を暴露する動画、生配信の一場面を切り抜いて揶揄する動画、動画のコメント欄や説明欄での中傷、自分の動画や写真の無断転載といった被害が起きています。投稿者に責任を問うには投稿者を特定する必要があり、そのための手続が発信者情報開示請求です。動画やコメントを消すには、YouTube を運営する Google LLC に対する削除請求を行います。

この記事では、YouTube の動画やコメントについて投稿者を特定する場合の仕組みと流れ、期間の目安、開示や削除が認められる基準、認められやすい投稿と認められにくい投稿、裁判例、削除請求をまとめます。当事務所の裁判例データベースには、YouTube に関する裁判例37件と、ニコニコ動画などを含む動画サイトに関する裁判例50件を収録しています。動画の事件に固有の論点は、著作権(無断転載・切り抜き)の事件が多いこと、動画の削除は投稿そのものの削除より基準が厳しく判断されることです。

要点

  • YouTube の運営会社は Google LLC で、Google マップの口コミと同じ会社です。動画については、投稿(アップロード)時のIPアドレスとタイムスタンプを保有しており、提供命令にも応じています。このほか、登録された電話番号とメールアドレスを保有しています。動画の投稿者(チャンネルの運営者)は、投稿の内容から誰かが分かる場合も多くあります。
  • 動画サイトの裁判例84件のうち40件は著作権の事件です。自分の動画や解説、楽曲、写真を無断で転載された場合、著作権の侵害として権利侵害が明白と判断されやすく、名誉毀損より争点が少なくなります。ただし、批評を添えて一部を切り出した投稿は、引用として適法とされ開示が認められなかった例があります。
  • 犯罪で逮捕されたと決めつける動画、元従業員を名乗る内部告発型の動画、私人の映像を氏名や勤務先とともに載せた動画は、名誉毀損やプライバシー侵害として開示や削除が認められています。公職者への批判や、施術のリスクの一般的な紹介は、認められていません。
  • 動画の削除は、運営会社が任意の申出では応じないことが多く、裁判所の仮処分や訴訟が必要になります。削除を命じた判決も、政治家に関する動画で削除を認めなかった判決もあります。

1. YouTube の投稿で問題になる類型

  • 動画による名誉毀損 特定の人を名指しして、犯罪で逮捕された、未成年者と不適切な関係を持った、会社が従業員を使い捨てにしている、といった事実を述べる動画。字幕や機械音声で文章を読み上げる形式、元従業員へのインタビュー形式、配信者が語る形式などがあります。
  • 切り抜き動画 生配信や他人の動画の一場面を切り出し、揶揄する字幕やサムネイルを付けて投稿するもの。名誉感情の侵害や著作権の侵害として扱われます。
  • コメント欄・説明欄の投稿 動画のコメント欄や説明欄に、本人の氏名を挙げて不正や私生活上の事実を書くもの。掲示板の投稿と同じ基準で判断されます。
  • 無断転載 自分で撮影した動画、解説、自作の楽曲、写真を無断で投稿されるもの。映像作品の一部をつないだ動画の投稿も含まれます。著作権(複製権・公衆送信権)や氏名表示権の侵害として扱われます。
  • プライバシーの侵害 過去に撮影された本人の映像を、氏名や現在の勤務先とともに投稿するもの。
  • 配信者への中傷 YouTube で活動する配信者に対する中傷は、YouTube 上ではなく、掲示板や X に書かれることが多くなっています。これについては「5ちゃんねるの誹謗中傷の投稿者を特定する方法と削除」「X の誹謗中傷の投稿者を特定する方法と投稿の削除」をご覧ください。

2. 運営会社が保有している情報

YouTube に動画を投稿したりコメントを書いたりするには、Google アカウントが必要です。動画については、運営会社は投稿(アップロード)時の接続元IPアドレスとタイムスタンプを保有しています。X や Instagram のようなログイン時の記録しかない「ログイン型」ではなく、投稿そのものの記録から接続プロバイダをたどることができます。一方、接続元のポート番号や接続先のIPアドレスは保有していません。このほか、Google アカウントに登録された電話番号とメールアドレスを保有しています。動画の投稿者については、チャンネルの名称や過去の動画、収益化のための登録から、投稿の内容だけで誰かが分かる場合も少なくありません。

広告収入の受取先として登録された住所は、動画の投稿に使うアカウントとは別のアカウントで管理されているため、投稿者の発信者情報として開示の対象にはならないとした判決があります(東京地方裁判所令和元年10月30日判決)。動画の投稿サイト一般についても、運営会社が決済サービスを通じて受け取る「ホルダー名」は登録者が自由に決められる名称にすぎず、氏名・住所を保有しているとは認められないとした例があります(同令和7年10月16日判決、TikTok の事案)。

運営会社に対する手続では、Google マップの口コミと同じ固有の事情があります。電話番号については、裁判所の終局的な決定や判決がなければ保有の有無を確認しないという立場をとること、意見照会を審理中に行わないこと、開示の対象を「発令日に保有し直ちに利用可能なものに限る」とする但書を求めてくることです。これらについては「Googleマップの口コミの投稿者を特定する方法」の第1節をご覧ください。

3. 投稿者を特定する手続の流れと期間の目安

運営会社に対する手続 運営会社に対する発信者情報開示命令の申立て(または仮処分、訴訟)により、投稿時のIPアドレスとタイムスタンプ、電話番号、メールアドレスの開示を求めます。開示命令の手続では、提供命令をあわせて申し立てるのが通常です。運営会社は提供命令に応じており、接続プロバイダの名称が申立人に提供され、その接続プロバイダに対する開示命令を同じ手続の中で申し立てた上で、運営会社からその接続プロバイダにIPアドレスなどの情報が渡されます。提供命令への運営会社の回答には、発令から1〜2か月かかるのが通常です。接続プロバイダが回線の卸元の事業者だった場合、実際の契約者を保有する卸先の事業者(格安SIMの事業者など)に対して、さらに開示命令を申し立てる必要があります。

接続プロバイダに対する手続 IPアドレスを割り当てていた接続プロバイダ(携帯電話会社や固定回線の事業者)に、契約者の氏名・住所の開示を求めます。動画サイトの裁判例84件のうち47件は、この接続プロバイダに対する請求です。

期間の目安 運営会社に対する手続は、Google マップの口コミと同じく他の運営会社より時間がかかり、申立てから初回期日まで1か月、ログの保有確認まで2か月、開示まで3か月以上が目安です。接続プロバイダに対する手続を含めると、投稿者の氏名・住所が分かるまで4〜6か月程度を見ておく必要があります。

ログイン型の動画サイトの注意点 投稿時ではなくログイン時のIPアドレスしか記録しない動画サイトでは、投稿から長い期間を経た最終ログインの情報は投稿との関連が薄いとして、開示が認められなかった例があります(知的財産高等裁判所令和3年2月4日判決、東京地方裁判所令和2年2月25日判決)。投稿に気づいた時点で手続を始めることが重要です。

4. 開示が認められる基準

発信者情報の開示が認められるには、①権利侵害の明白性と、②開示を受けるべき正当な理由が必要です。YouTube の事件で実際に争点になるのは、主に次の点です。

動画が示す事実の読み取り方 動画は、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準に、何を事実として示しているかが判断されます。犯罪で逮捕されたという言及が冒頭の短い部分だけでも、字幕と音声で示され動画の内容説明として位置付けられていれば、かえって視聴者の印象に残るとして名誉毀損が認められました(東京地方裁判所令和5年2月1日判決)。元従業員へのインタビュー形式の動画は、離職に関するテロップが繰り返し大きく表示されることから、早期離職の多い職場だという事実を示すものとされ、出演者と投稿者の共同不法行為が認められました(同令和5年3月20日判決)。

チャンネルの見え方 社会福祉法人の名称とロゴを使ったチャンネルに、介護の様子を撮影したままの動画が投稿された事案では、一般の視聴者には法人自身が被介護者の同意なく公開したと受け取られるとして、法人の社会的評価の低下が認められました(同令和5年8月18日判決)。

説明欄とコメント欄 動画の説明欄に、クリニックと理事長名のハッシュタグを付けて、医療事故を隠して患者をだましていると書いた投稿は、過去の不満の表明ではなく現在の事実の摘示にあたり、重要な部分が真実でないとして開示が認められました(同令和5年12月25日判決)。氏名を題名にした動画のコメント欄の投稿や、その返信のコメントは、本人を話題にしたものとして同定可能性が認められています(同令和4年5月31日判決)。

切り抜きと揶揄 生配信でうまく話せなかった場面を切り抜き、コミュニケーションが困難な人物と揶揄する字幕やサムネイルを付けた動画は、会話の内容の批評にとどまらず本人の様子をことさらに取り上げて揶揄したものとして、名誉感情の侵害が明らかとされました。本人が自ら出演した動画であることや、サイトが一定の批評を受ける前提のものであることは、揶揄を甘受すべき理由にならないとされています(同令和5年10月12日判決)。

著作権 製品の使い方を口頭で解説した動画は、事柄の選択や説明の仕方、言葉の選択に工夫があるとして言語の著作物と認められ、その一部を切り出した動画の投稿は複製権の侵害とされました(同令和5年3月29日判決)。自作の楽曲を作者名を示さずに投稿されたことは、氏名表示権の侵害とされています(同令和5年1月30日判決)。日常の様子を撮って編集した動画も、構図や角度、編集の工夫に創作性があるとして著作物と認められました(同令和7年10月16日判決)。一方、展示会で映写されたゲーム画面を撮っただけの動画は、新たな創作的表現がないとして著作物性が否定されました(同令和3年4月23日判決)。

引用 批評の記事とともに動画の一場面を切り出した画像を投稿した事案では、引用として適法でないとはいえないとして、開示が認められませんでした(知的財産高等裁判所令和7年2月19日判決)。逆に、動画の場面の静止画を多数貼り、感想が相当に短いブログ記事は、引用の正当な範囲を超えるとして著作権侵害が認められています(東京地方裁判所令和3年3月26日判決)。切り出した分量と、添えられた批評の分量との関係で結論が分かれます。

5. 開示や削除が認められやすい投稿と認められにくい投稿

動画サイトの裁判例84件のうち、請求が認められたもの(一部認容を含む)は69件、棄却されたものは15件です。認められた例と棄却された例を見ると、次の傾向があります。

認められやすい投稿

  • 犯罪で逮捕された、未成年者と不適切な関係を持ったなど、具体的な事実を決めつける動画
  • 元従業員を名乗り、内部者しか知らない事実を具体的に述べる形式で会社や上司を非難する動画
  • 過去に撮影された私人の映像を、氏名や現在の勤務先とともに投稿する動画
  • 生配信の一場面を切り抜き、揶揄する字幕やサムネイルを付けた動画
  • 自分で撮影・編集した動画、口頭の解説、自作の楽曲、写真、映像作品の無断転載
  • 説明欄やコメント欄で氏名を挙げて不正や私生活上の事実を書く投稿

認められにくい投稿

  • 公職者の活動に対する批判で、何を指しているかの具体的な事実が示されていない動画
  • 施術や製品の一般的なリスクを紹介する動画で、特定の事業者を指していると分からないもの
  • 批評を添えて動画の一部を切り出した投稿で、引用として適法といえる余地があるもの
  • 他人の映像をそのまま撮っただけで、自分の創作的な表現が加わっていない動画の転載
  • 投稿から長い期間を経たログインの記録しか手がかりがない場合

6. 動画の削除請求

運営会社への申出 YouTube には、プライバシー侵害や著作権侵害、嫌がらせを報告する窓口があります。著作権侵害の申出は比較的応じられやすい一方、名誉毀損の動画については、運営会社が名誉毀損にあたるか判断できないとして応じないことが多く、裁判所の手続が必要になります(徳島地方裁判所令和2年2月17日判決の事案でも、任意の申出は拒まれています)。

裁判所の判断基準 動画の削除は、投稿者の表現の自由と直接ぶつかるため、開示より慎重に判断されます。徳島地方裁判所令和2年2月17日判決は、元従業員を名乗る動画について、専ら公益を図る目的でないことが明らかであるか、摘示事実が真実でないことが明らかで、かつ重大で回復困難な損害のおそれがある場合に削除が認められるとの基準を示し、匿名で不買を呼びかけ復讐として拡散を求めていることから嫌がらせと復讐が主な目的だとして、削除と開示を命じました。東京地方裁判所令和8年4月23日判決は、県議会議員が疑惑を作り上げたと述べる応援演説の動画について、政治家への言及は削除を慎重に判断すべきだとしつつ、虚偽の事実の摘示であり違法性阻却事由がない以上、人格権の保障が表現の自由の保障を上回り、反論で足りるとはいえないとして削除を命じました。

一方、県議会議員がデマを広めたとする動画は、デマの中身も根拠も示されず公職者への批判の域を出ないとして削除が認められず(同令和7年8月20日判決)、美容施術のリスクを紹介した医師の動画も、特定のクリニックを指すと分からず社会的評価を下げないとして削除が認められませんでした(同令和4年1月27日判決)。政治家の演説を録画した動画について、演説全体の趣旨から違法行為の事実の摘示とはいえないとして削除と賠償を退けた高裁判決もあります(大阪高等裁判所平成29年1月31日判決)。

削除と開示の順序 投稿者に損害賠償を求めるつもりがある場合、先に動画が削除されると、開示請求に必要な証拠が失われます。動画のURL、チャンネル名、表示画面、投稿日時、コメントの場合はコメント欄の表示を保存した上で進めます。証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。

7. 裁判例

当事務所の裁判例データベースには、YouTubeに関する裁判例37件と、動画サイトに関する裁判例50件を収録しています(2026年10月現在)。本記事で触れた裁判例は次のとおりです。各リンク先に、事案の概要と判決理由の骨子があります。

8. 投稿者を特定した後にできること

投稿者が特定できた後は、損害賠償請求(示談交渉、または訴訟)、投稿者自身による動画やコメントの削除と再投稿しないことの約束、悪質な場合の刑事告訴(名誉毀損罪、侮辱罪、著作権法違反など)が考えられます。認められる賠償額の実例は「ネット上の誹謗中傷の慰謝料・損害賠償額の一覧」にまとめています。

9. ご相談について

YouTube の動画やコメントの削除、投稿者の特定をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。費用についてはFeeをご覧ください。

関連する解説

資料