X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、Googleマップの口コミは、投稿のたびにIPアドレスを記録する掲示板と違い、アカウントにログインしたときの通信記録しか残しません。このようなサービスを「ログイン型」と呼びます。投稿そのものの記録がないため、投稿者を特定するには、ログイン時の通信から投稿者にたどり着く必要があり、開示請求の組み立て方が掲示板とは大きく異なります。
この記事は、ログイン型の投稿者を特定する仕組みと、どのログインが開示の対象になるのか、2022年10月の改正法で何が変わったのかを、当事務所の裁判例データベースに収録しているログイン型の裁判例441件(2013年〜2025年)をもとに整理したものです。媒体ごとの手続の流れは、X、Instagram、Facebook、Googleマップの各記事をご覧ください。
要点
- ログイン型の投稿者の特定は、運営者からログイン時のIPアドレスと日時の開示を受け、そのIPアドレスを割り当てていた接続プロバイダに契約者の氏名・住所の開示を求める、という2段階で進みます。開示の対象になるのは、原則として投稿に最も時間的に近いログイン1回分です。
- 2022年10月に施行された改正法は、投稿と「相当の関連性」のあるログイン時の通信を「侵害関連通信」、その通信に関する発信者情報を「特定発信者情報」として、開示の対象になることを明文化しました。改正前は、ログインの情報は開示の対象にならないとする判決が相次いだ時期があります。
- ログイン型の裁判例441件のうち、開示が全部認められたものは260件、一部認められたものは101件、認められなかったものは80件です。認められなかった80件のうち69件は、投稿の内容ではなくログインに関する理由によるもので、最も多いのは、投稿の後や投稿から離れた時期のログインしか手がかりがなかった場合(36件)です。
- 投稿に近いログインから特定できなかった場合には、投稿の13時間後や9か月後のログイン、58番目のログインが対象と認められた例があります。ログインの記録には保存期間があるため、投稿に気づいてから手続を始めるまでの時間が結果を左右します。
1. ログイン型のサービスと、運営者が保有している情報
5ちゃんねるや爆サイのような掲示板では、投稿のたびに投稿者のIPアドレスとタイムスタンプが記録され、投稿そのものの通信をたどって接続プロバイダに契約者の開示を求めることができます。これに対して、X、Instagram、Facebook、Googleマップの口コミでは、アカウントにログインしてから投稿する仕組みになっており、運営者が記録しているのはログイン時(サービスによってはログアウト時やアカウント作成時)のIPアドレスと日時、登録された電話番号・メールアドレスです。投稿そのもののIPアドレスは記録されていません。Xは氏名・住所の登録を求めておらず、電話番号またはメールアドレスの一方しか保有していないことがあります。
ログイン自体は誰の権利も侵害しない通信です。そのため、ログイン時の記録から分かる契約者の情報が、法律の定める「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるのかが長く争われてきました。これがログイン型に固有の問題です。
2. ログイン時の通信から投稿者にたどり着く仕組み
2段階の手続 第1段階として、運営者に対する発信者情報開示命令の申立て(または仮処分)により、問題の投稿をしたアカウントのログイン時のIPアドレスと日時の開示を受けます。第2段階として、そのIPアドレスをその日時に割り当てていた接続プロバイダ(携帯電話会社や固定回線の事業者)に対し、契約者の氏名・住所などの開示を求めます。2022年10月に始まった開示命令の手続では、運営者から接続プロバイダにIPアドレスなどを直接渡す提供命令をあわせて申し立て、一つの手続の中で接続プロバイダに対する開示命令まで進めることができ、InstagramとFacebookの運営会社やGoogleに対してはこの経路が通常です。Xは提供命令に応じないため、提供命令は使わず、運営者に対する手続と接続プロバイダに対する手続を分けて進めます。Xは決定が出ても間接強制の申立てまで開示に応じないことが長く続きましたが、2026年9月ごろからは決定後速やかに開示するようになっています(Xの記事)。
電話番号の経路 運営者から電話番号の開示を受けられれば、携帯電話会社への照会で契約者を特定できる場合があり、接続プロバイダのログの保存期間に左右されません。ただし、電話番号を登録していないアカウントも多く、ログイン時のIPアドレスと並行して請求するのが通常です。
どのログインを選ぶか 運営者から開示されるログイン記録は複数あります。このうち、どのログインの契約者情報を接続プロバイダに求められるかが、ログイン型の最大の論点です。投稿と関係のないログインの契約者を開示すれば、投稿者でない人の通信の秘密を侵すことになるため、接続プロバイダはログインと投稿の結び付きを厳しく争います。以下、この点についての判決を、改正の前後に分けて見ていきます。
3. 改正前:ログインの情報は開示の対象になるのか
対象にならないとした判決 改正前の法律は、開示の対象を「当該権利の侵害に係る発信者情報」と定めるだけで、ログインの情報に触れていませんでした。東京地方裁判所平成27年3月27日判決は、Facebookの投稿について、ログイン時の情報は「侵害情報である本件各記事の投稿に係る電気通信の過程において把握される発信者等に関する情報ではない」として、投稿者とログインした者が同一人物であっても開示の対象にならないと判断しました。Xについても、東京地方裁判所平成27年9月29日判決や同平成30年9月6日判決など、同じ理由で請求を退けた判決が続きました。平成30年9月6日判決は、ログインの情報が対象外だと開示請求が一切できなくなるという主張に対し、「立法による解決を待つしかない」と述べています。2016年のログイン型の判決は9件中7件、2017年は10件中6件が、開示を認めていません。
対象になり得るとした判決 他方で、東京高等裁判所平成26年5月28日判決は、ログインしなければ利用できないサービスでは「ログインするのは当該アカウント使用者である蓋然性が認められる」として、ログイン時の情報も投稿者の特定に資する発信者情報に当たるとしていました。東京高等裁判所平成30年6月13日判決は、Xのなりすましアカウントについて、法律が「権利の侵害に係る発信者情報」と幅を持たせて規定していることから、投稿の後のログインから分かる情報でも、投稿者のものと認められるのであれば開示の対象になり得ると判断し、請求を退けた一審判決を取り消しました。2020年以降は、この考え方に立つ判決が多数を占めるようになり、東京高等裁判所令和3年9月30日判決も、投稿から2週間以上後のログインについて、ログインした者と投稿者の同一性を認めて開示を命じています。
同一性の判断 ログインの情報が対象になり得るとしても、そのログインをした人が投稿者だと認められなければ開示はされません。判決は、ログインにパスワードが必要なことから「ログイン者と投稿者は同一である蓋然性が高い」ことを出発点にしつつ、投稿とログインの時間的な近さ、その間に別のログインがないか、アカウントが一人で運用されているか、他の接続プロバイダ経由のログインがどの程度あるかを見ています。東京高等裁判所令和2年11月26日判決は投稿の18秒前のログイン、東京地方裁判所令和3年6月24日判決(令和2年(ワ)第31118号)は投稿の62分前と102分前のログインについて同一性を認めました。投稿から離れたログインでも、同令和3年6月24日判決(令和3年(ワ)第690号)は投稿専用に作られたアカウントの2か月後のログイン、同令和3年11月19日判決は1年以上後のログインについて、アカウントの性質や投稿内容の一貫性から同一性を認めています。逆に、東京高等裁判所平成31年1月23日判決は、投稿の13〜16時間前のログインについて、ログインの7割が他のプロバイダ経由であることなどから複数人で使われている可能性があり、「ログインと投稿の連続性を認められるほど時間的な近接性がなく」として開示を認めませんでした。
4. 2022年10月の改正法:侵害関連通信と特定発信者情報
何が変わったか 2022年10月1日に施行された改正プロバイダ責任制限法(2025年4月の改正で情報流通プラットフォーム対処法に改称)は、投稿そのものの通信のほかに、アカウントの作成・ログイン・ログアウト・削除の際の通信のうち、投稿の送信と「相当の関連性を有するもの」を「侵害関連通信」とし、その通信に関する発信者情報を「特定発信者情報」と名付けて、開示の対象になることを明文化しました。
補充性 特定発信者情報の開示には、通常の要件(権利侵害の明白性と正当な理由)に加えて、運営者が氏名・住所などの発信者情報を保有していない、保有しているのが電話番号やメールアドレスだけである、といった事情が必要です。これを補充性の要件といいます。東京地方裁判所令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70061号)は、Xでは個人アカウントの作成に氏名と住所の登録が求められず、運営者が投稿時のIPアドレスも持っていないことから、この要件を満たすとしています。
施行前の投稿にも適用される 改正法には経過措置がなく、施行前の投稿についても、施行後に判決が出る事件には改正法が適用されます(東京地方裁判所令和5年1月18日判決(令和4年(ワ)第15906号)、同令和5年1月27日判決(令和4年(ワ)第18052号)など)。
「相当の関連性」の判断の仕方 改正法のもとでは、ログインと投稿が同一人物によるものかという改正前からの論点に加えて、そのログインが投稿と「相当の関連性」を有するかが判断されます。判決は、この要件の趣旨を、投稿者でない人の情報が開示されることや接続プロバイダの過大な負担を避けるため、開示の対象を投稿者の特定に必要な最小限度に絞る点にあると説明したうえで、同一人物によるものである高度の蓋然性を前提に、通信記録の保存状況、他のログインと比べた相対的な時間的近さ、投稿者を特定する他の手段の有無を総合して判断しています(東京地方裁判所令和5年5月9日判決、同令和5年12月5日判決)。
改正法の施行後に言い渡された判決120件では、開示が全部認められたものが79件、一部認められたものが26件、認められなかったものが15件です。認められなかった割合は13%で、施行前の判決321件の20%より下がっています。
5. どのログインが開示の対象になるか
原則は、投稿に最も近いログイン1つ 東京地方裁判所令和5年11月10日判決は、1か月分のログイン情報の開示を求めた事案で、次のように述べて範囲の拡張を認めませんでした。
侵害情報の送信と相当の関連性を有するログイン時の送信は、原則として1つであり、通常は、侵害情報の送信と最も時間的に近接するログイン時等の送信によって侵害情報の送信がなされた蓋然性が高い
東京地方裁判所令和6年1月16日判決も、特段の事情のない限り投稿ごとに1つとして、最も近い1件に限る内容に開示命令を変更しています。
投稿の前か後か 投稿は、そのときログインしている状態でされるので、投稿の直前のログインが最も結び付きの強い通信です。東京地方裁判所令和5年2月6日判決は、投稿の後により近いログインがあっても、投稿の2時間44分前のログインが相当の関連性を有するとしました。同令和5年2月24日判決(令和4年(ワ)第18517号)は、相当の関連性があるといえるのは、投稿の通信と直接結び付くログインか、直接の結び付きはなくても「発信者の特定のために他に方法がない」などの事情があるログインに限られるとし、直前のログインがある以上、投稿後のログインは対象にならないとしました。一方、投稿後のログインであること自体は妨げにならず、同令和5年3月3日判決は、法律が「侵害情報の送信の前後を問わず」ログイン時の通信が侵害関連通信に当たり得ることを前提にしていると述べています。
最も近いログインから特定できないとき 投稿に最も近いログインの契約者を接続プロバイダが1人に絞れないことや、そのログインが海外のプロバイダや公衆無線LAN経由であることは珍しくありません。この場合、判決は、次に近いログインを対象と認めています。東京地方裁判所令和5年6月15日判決は直前のログインから特定できなかった事案で投稿の約2時間後のログインを、前記の令和5年3月3日判決は約13時間後のログインを、それぞれ侵害関連通信と認めました。同令和6年7月22日判決は、投稿に近い57件のログインのいずれからも投稿者を特定できなかった事案で、58番目のログインも対象になると判断し、最も近い1件に限るとすれば「不特定の者が回線を使用できる店舗等を利用することにより、容易に発信者の特定を免れることができる結果となる」と述べています。
保存期間の関係で、離れたログインしか残っていないとき 運営者のログイン記録には保存期間があり、投稿に気づくのが遅れると、投稿に近いログインは既に消えています。判決は、「開示可能な範囲内で最も時間的に近接した」ログインであれば、投稿から時間が経っていても対象になるとしています。東京地方裁判所令和5年4月26日判決は投稿の約9か月後のログイン、同令和5年9月6日判決は3か月余り後のログインについて、保存されている中で最も近いものとして開示を認めました。前記の令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70061号)も、保存期間の関係で投稿から相当期間後のログインしか残っていない事案で、「発信者を特定するためにより適切な手段があるとは認められない」として開示命令を維持しています。
認められなかった例 東京地方裁判所令和5年5月29日判決は、投稿から約1年6か月後のログインについて、それより投稿に近い20以上のログインがあることから「関連性は相当に希薄」として、侵害関連通信に当たらないとしました。同令和5年3月10日判決は、Instagramの投稿の約5日後のログインについて、投稿の直前に別のログインがあり、その接続プロバイダも特定されていて他に方法がないとはいえないとして、開示を認めませんでした。投稿の後のログインは、直前のログインから特定できないことを示せない限り、対象になりにくいといえます。
6. 接続プロバイダの段階で起きる問題
運営者からログイン時のIPアドレスと日時の開示を受けても、接続プロバイダの側で契約者にたどり着けないことがあります。
- 該当する契約者が複数いる 接続プロバイダによっては、1つのIPアドレスをポート番号で分けて同じ秒に複数の利用者に使わせる仕組みがあり、運営者が接続先のIPアドレスやポート番号を記録していないと、契約者を1人に絞れません。東京地方裁判所令和5年3月14日判決(令和3年(ワ)第19663号)は、特定された4件の契約者がいずれも別人だった事案で開示を認めず、同令和4年11月15日判決(令和3年(ワ)第28267号)は、ログインごとに7件・42件の通信記録が該当した事案で、接続プロバイダが発信者情報を「保有する」とはいえないとしました。複数のログインに共通する契約者を調べるよう求めた請求も、無関係な通信者の情報に触れる調査を要するとして退けられています(同令和5年1月26日判決(令和4年(ワ)第2584号))。改正法のもとでも、同令和5年2月28日判決は、複数の契約者が該当した通信は投稿と時間的に近くても開示は相当でないとしました。
- 契約者が「自分ではない」と答える 接続プロバイダの意見照会に対し、契約者が投稿を否定することがあります。判決の多くは、裏付けのない否定だけでは同一性の推認は覆らないとしています。東京地方裁判所令和4年11月15日判決(令和4年(ワ)第19874号)は、テザリングのパスワードを公開していたという契約者の説明を信用できないとして退け、同令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70200号)も、不正アクセスを受けたという説明に的確な証拠がないとして開示を命じました。他方、同令和4年6月13日判決は、多くの人に回線を使わせている法人だという契約者の回答が不自然とはいえないとして契約者を投稿者と認めず、同令和4年7月25日判決は、問題のログインが自動ツイートサービスによるものだという説明を、毎日同じ時刻の定型的な投稿があることから信用しました。
- 契約者と投稿者が別人でも開示される場合 開示の対象は投稿者本人の情報に限られず、省令が定める「その他侵害情報の送信に係る者」の情報を含みます。東京地方裁判所令和3年3月29日判決(令和2年(ワ)第7792号)は、同居者が投稿したと認めた事案で回線契約者の情報の開示を命じ、同令和3年10月5日判決は、契約者が投稿者本人でなくても、その管理下の端末からログインした利用者の情報の開示を認めました。同令和2年12月18日判決は、契約者が身に覚えがないと答えた事案で、契約者を投稿者とまでは認めずに、氏名・住所に限って開示を命じています。
7. 認められなかった80件の内訳と、媒体別の状況
ログイン型の裁判例441件のうち、開示が認められなかった80件の理由を分類すると、次のとおりです(1件1分類)。
- 投稿の後、または投稿から離れた時期のログインで、投稿との結び付きや同一性が認められない 36件
- 投稿の前のログインだが、間に別のログインがある、同時ログインや自動投稿の可能性があるなどで、そのログインで投稿されたと認められない 14件
- 接続プロバイダの側で契約者を1人に特定できない 7件
- 改正前の厳格な解釈で、ログインの情報は開示の対象にならないとしたもの 5件
- 改正法の「相当の関連性」が否定された、または範囲の拡張が認められなかったもの 3件
- アカウントの共有の疑い 2件、契約者の否認が信用されたもの 2件
- 投稿の内容(権利侵害の明白性)などログイン以外の理由 11件
一部だけ認められた101件のうち51件も、要旨に現れる限りで、複数のログインの一部について開示が認められなかったものです。投稿の内容に問題があっても、どのログインを選ぶかで結果が分かれています。
媒体別に見ると、Xが347件(認められなかったもの64件、18%)で大半を占め、Instagramが27件(3件、11%)、Googleマップが20件(1件、5%)、Facebookが8件(3件、38%)です。Facebookで割合が高いのは改正前の2015年〜2017年の判決が多いためで、改正後の東京地方裁判所令和5年4月14日判決は、多数のIPアドレスからのログインがある投稿後のログインについても、投稿内容の一貫性などから同一性を認めて開示を命じています。Instagramでは同令和5年6月16日判決が投稿に最も近いログインを侵害関連通信と認めました。Googleマップの口コミは、同令和2年9月25日判決が、書込み時の記録がなくログインの情報を求めるほかに手段がないとして改正前から開示を認めており、同令和5年6月12日判決は投稿直前のログインを侵害関連通信としました。認められなかった割合が低いのは、Googleが投稿直前のログインの情報を開示しているためと考えられます。
8. 見通しを立てるときに確認する点
- 投稿からどのくらい経っているか 運営者のログイン記録と接続プロバイダの通信記録には、それぞれ保存期間があります。投稿に近いログインが残っていれば、同一性と関連性はほぼ問題なく認められます。時間が経つほど、離れたログインを手がかりにせざるを得なくなります。
- 投稿の日時が特定できるか 投稿の日は分かっても時刻が分からない場合、同じ日のログインが投稿の前か後かを証明できず、開示が認められなかった例があります(東京地方裁判所令和2年10月9日判決、同令和4年9月30日判決)。投稿の表示画面は、日時が分かる形で保存しておく必要があります。
- アカウントが一人で運用されているか 法人や団体のアカウント、複数人で共有している疑いのあるアカウントでは、ログインした人が投稿者だと認められにくくなります(東京地方裁判所令和4年4月27日判決、同令和3年11月25日判決(令和3年(ワ)第13399号))。逆に、なりすましや特定の人への中傷のために作られたアカウントは、一人で使っていると推認されやすくなります。
- 投稿が消される前に記録を残す 投稿やアカウントが削除されると、投稿の日時や内容の証明が難しくなります。削除請求を先行させるかどうかは、開示との順序を考えて決めます。
ログインと投稿の結び付きとは別に、投稿の内容について権利侵害が明らかであることが必要なのは、掲示板の投稿と同じです。内容の面で認められなかった類型は「開示が認められなかった投稿の類型」に、特定にかかった費用の回収は「特定費用は取り戻せるか」にまとめています。
9. ご相談について
X、Instagram、Facebook、Googleマップの投稿者の特定をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。投稿のURLと投稿の日時をお知らせいただければ、ログイン記録の残っている見込みを含めて、特定の見通しをお伝えします。投稿の表示画面などの証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。費用についてはFeeをご覧ください。
関連する解説
- X(旧Twitter)の誹謗中傷の投稿者を特定する方法と投稿の削除
- Instagram(インスタグラム)のなりすまし・誹謗中傷の投稿者を特定する方法と削除
- 誹謗中傷の投稿者特定にかかった費用は取り戻せるか|判決26件の集計
資料
- 情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)5条1項(発信者情報の開示請求。3号が特定発信者情報の補充性)、5条3項(侵害関連通信)、同法施行規則5条(侵害関連通信の範囲)、15条(提供命令)
- 集計の対象: 当事務所の裁判例データベースに収録している裁判例のうち、要旨または判決理由の骨子にログイン時の通信・侵害関連通信・特定発信者情報の論点が現れる441件(2013年〜2025年。BitTorrentの事件を除く)。「認められなかった」は開示請求者側の敗訴に分類したもの。理由の分類は各判決の理由を読んで1件1分類とした。
引用した裁判例
各リンク先に、事案の概要と判決理由の骨子があります。
- 東京高等裁判所平成26年5月28日判決(平成26年(ネ)第797号) ログインが必要なサービスでは、ログイン時の情報も投稿者の特定に資する発信者情報に当たる
- 東京地方裁判所平成27年3月27日判決(平成26年(ワ)第27513号) Facebook。ログイン時の情報は投稿の通信で把握される情報ではないとして不開示
- 東京地方裁判所平成27年9月29日判決(平成27年(ワ)第5814号) X。ログイン時の契約者情報は侵害情報の発信に係る情報ではないとして不開示
- 東京地方裁判所平成30年9月6日判決(平成29年(ワ)第41936号) X。ログイン情報は発信者情報に当たらず、立法による解決を待つしかないとして不開示
- 東京高等裁判所平成30年6月13日判決(平成29年(ネ)第5572号) X。投稿後のログインの情報も投稿者のものと認められれば対象になるとして、一審を取り消して開示
- 東京高等裁判所平成31年1月23日判決(平成30年(ネ)第4549号) X。投稿の13〜16時間前のログインについて、複数人の共有の可能性と時間的な隔たりから不開示
- 東京地方裁判所令和2年9月25日判決(令和2年(ワ)第9372号) Googleマップ。書込み時の記録がなく他に手段がないとして、ログイン時の情報の開示を命令
- 東京地方裁判所令和2年10月9日判決(令和2年(ワ)第4959号) Instagram・X。投稿時刻が不明で前後の別ログインもあり、どのログインで投稿されたか証明がないとして不開示
- 東京高等裁判所令和2年11月26日判決(令和2年(ネ)第1555号) X。投稿の18秒前のログインについて同一性を認め、開示を命令
- 東京地方裁判所令和2年12月18日判決(令和2年(ワ)第14954号) X。契約者が身に覚えがないと回答した事案で、氏名・住所に限って開示を命令
- 東京地方裁判所令和3年3月29日判決(令和2年(ワ)第7792号) X。同居者が投稿した事案で、回線契約者の情報を「その他侵害情報の送信に係る者」として開示
- 東京地方裁判所令和3年6月24日判決(令和2年(ワ)第31118号) X。投稿の62分前・102分前のログインを発信者情報と認め、電話番号を含めて開示
- 東京地方裁判所令和3年6月24日判決(令和3年(ワ)第690号) X。投稿専用のアカウントの2か月後のログインについて同一性を認め、開示を命令
- 東京高等裁判所令和3年9月30日判決(令和2年(ネ)第3913号) X。投稿から2週間以上後のログインについて同一性を認め、一審を取り消して開示
- 東京地方裁判所令和3年10月5日判決(令和3年(ワ)第7101号) X。契約者が投稿者本人でなくても、その管理下の端末からログインした利用者の情報を開示
- 東京地方裁判所令和3年11月19日判決(令和2年(ワ)第24076号) X。投稿から1年以上後のログインについて同一性を認めて開示。投稿後に契約された回線のプロバイダへの請求は棄却
- 東京地方裁判所令和3年11月25日判決(令和3年(ワ)第13399号) X。共用が推認されるアカウントで、他社経由のログインも近い時刻にあり、結び付きを否定
- 東京地方裁判所令和4年4月27日判決(令和3年(ワ)第23886号) X。アカウントを複数人で共有している疑いがあるとして不開示
- 東京地方裁判所令和4年6月13日判決(令和3年(ワ)第24391号) X。多くの人に回線を使わせている法人だという契約者の回答を虚偽と断定できないとして不開示
- 東京地方裁判所令和4年7月25日判決(令和4年(ワ)第2247号) X。投稿翌日のログインが自動ツイートサービスによるものと推認され、不開示
- 東京地方裁判所令和4年9月30日判決(令和3年(ワ)第25945号) X。投稿時刻が不明で、33分前に別のログインもあることから、結び付きを否定
- 東京地方裁判所令和4年11月15日判決(令和3年(ワ)第28267号) X。ログインごとに複数の通信記録が該当し、接続プロバイダが発信者情報を保有するとはいえないとして不開示
- 東京地方裁判所令和4年11月15日判決(令和4年(ワ)第19874号) X。ログインから投稿までの間に別のログインがなく、第三者が投稿したとの契約者の回答を退けて開示
- 東京地方裁判所令和5年1月18日判決(令和4年(ワ)第15906号) Instagram。アカウント作成日の唯一のログインを侵害関連通信と認め、施行前の投稿に改正法を適用
- 東京地方裁判所令和5年1月26日判決(令和4年(ワ)第2584号) X。複数のログインに共通する契約者の情報を求めた請求を、無関係な通信者の情報に触れる調査を要するとして棄却
- 東京地方裁判所令和5年1月27日判決(令和4年(ワ)第18052号) X。施行前の投稿に改正法を適用し、投稿の前提となったログイン1回分に限って開示
- 東京地方裁判所令和5年2月6日判決(令和4年(ワ)第18992号) X。投稿後により近いログインがあっても、投稿の2時間44分前のログインに相当の関連性を認定
- 東京地方裁判所令和5年2月24日判決(令和4年(ワ)第18517号) X。投稿と直接結び付くログインか、他に方法がない場合に限って相当の関連性を認め、投稿後のログインは否定
- 東京地方裁判所令和5年2月28日判決(令和4年(ワ)第13819号) X。複数の契約者が該当した通信は時間的に近くても開示は相当でないとして不開示
- 東京地方裁判所令和5年3月3日判決(令和4年(ワ)第22808号) X。投稿に近いログインで特定できず他に手段もないとして、約13時間後のログインに相当の関連性を認定
- 東京地方裁判所令和5年3月10日判決(令和4年(ワ)第21352号) Instagram。投稿の約5日後のログインは、直前のログインがあり他に方法がないとはいえないとして侵害関連通信に当たらない
- 東京地方裁判所令和5年3月14日判決(令和3年(ワ)第19663号) X。同じ秒に同じIPアドレスを複数の利用者が使う仕組みのため、契約者情報が投稿者の特定に資するとはいえないとして不開示
- 東京地方裁判所令和5年4月14日判決(令和4年(ワ)第29747号) Facebook。多数のIPアドレスからのログインがある投稿後のログインについて同一性を認め、開示を命令
- 東京地方裁判所令和5年4月26日判決(令和4年(ワ)第28822号) X。投稿の約9か月後でも、開示可能な記録のうち最も近いログインは侵害関連通信に当たる
- 東京地方裁判所令和5年5月9日判決(令和4年(ワ)第28042号) X。同一人物による高度の蓋然性を前提に、保存状況と時間的近接性を総合して判断する枠組みを示し、直近でないログインを開示
- 東京地方裁判所令和5年5月29日判決(令和4年(ワ)第13685号) X。投稿から約1年6か月後のログインは関連性が相当に希薄で、侵害関連通信に当たらない
- 東京地方裁判所令和5年6月12日判決(令和4年(ワ)第23420号) Googleマップ。施行前の投稿に改正法を適用し、投稿直前のログインを侵害関連通信と認定
- 東京地方裁判所令和5年6月15日判決(令和5年(ワ)第1717号) X。直前のログインから特定できなかった事案で、投稿の約2時間後のログインを侵害関連通信と認定
- 東京地方裁判所令和5年6月16日判決(令和4年(ワ)第32279号) Instagram。投稿に最も近いログインを侵害関連通信と認め、開示を命令
- 東京地方裁判所令和5年9月6日判決(令和5年(ワ)第2698号) X。投稿から3か月余り後でも、開示可能な範囲で最も近いログインとして侵害関連通信と認定
- 東京地方裁判所令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70061号) X。補充性を認め、保存期間の関係で投稿から相当期間後のログインしか残っていなくても、他に適切な手段がないとして開示命令を認可
- 東京地方裁判所令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70200号) X。不正アクセスを受けたという契約者の説明に裏付けがないとして開示を命令
- 東京地方裁判所令和5年11月10日判決(令和5年(ワ)第13298号) X。侵害関連通信は原則として投稿に最も近いログイン1つ。1か月分の開示請求は認めず
- 東京地方裁判所令和5年12月5日判決(令和5年(ワ)第16317号) X。最も近いログインから特定できず他に手段がない場合には、それ以外のログインも例外的に対象になるとして開示命令を認可
- 東京地方裁判所令和6年1月16日判決(令和5年(ワ)第70165号) X。侵害関連通信は特段の事情のない限り投稿ごとに1つとし、最も近い1件に限る内容に開示命令を変更
- 東京地方裁判所令和6年7月22日判決(令和5年(ワ)第25461号) X。57件のログインから特定できなかったため、58番目のログインも開示の対象
本記事で取り上げた裁判例には、当事務所が代理人として関与した事件が含まれます。

サイバーアーツ法律事務所 弁護士(東京弁護士会、2007年登録)。インターネット上の権利侵害に関する事件のみを扱う。