クリニック・病院・歯科の悪い口コミは削除・投稿者特定できるか|判決123件

クリニック、病院、歯科医院、美容クリニックには、Googleマップの口コミ、医療機関の口コミサイト、爆サイや5ちゃんねるの病院名のスレッド、X や Instagram への投稿が寄せられます。この記事は、医療機関や医師が批判的な口コミの削除や投稿者の特定(発信者情報開示)を求めた裁判例が、どこで線を引いているかを、当事務所の裁判例データベースに収録している、医療機関・医師が請求した判決・決定123件をもとに整理したものです。

Googleマップの口コミについての手続の流れと期間の目安は「Googleマップの口コミの投稿者を特定する方法」を、医療機関以外も含めた法人・店舗の整理は「会社・店舗への誹謗中傷」をご覧ください。

要点

  • 医療機関・医師が請求した123件のうち、請求が全部または一部認められたものは80件、認められなかったものは43件です。Googleマップ等の地図サービスと口コミサイトに患者の立場で書かれた口コミ54件に限ると、認められたものは33件、認められなかったものは21件です。
  • 医療機関の口コミは、これから医療機関を選ぶ患者にとって重要な情報であり、公共性が高いとされます。医療機関は一定の範囲で批判的な口コミを受忍すべき立場にあるとした判決が複数あり、認められなかった口コミ21件のうち16件は、感想や評価にとどまる、または医療機関で通常あり得る事態を書いたにすぎないという理由でした。
  • 認められたのは、診療の内容、料金、説明について具体的な事実が書かれ、医療機関側が診療録、看護体制、休診日などの資料で事実と異なることを示せた口コミです。受診していない者の投稿、さくらの断定、医師へのなりすましも認められています。
  • 患者の体験に基づく批判は、事実と異なることを示せなければ認められません。誤診の指摘について他院で診断が分かれていた事案、医師の陳述書と投稿者の説明が対立した事案では、開示は認められませんでした。
  • 星の評価だけの口コミについて、開示や削除を認めた判決はデータベースにありません。削除を求めた12件のうち、認められたものは4件です。
  • 投稿者に対する損害賠償で医師個人に認められた額は、80万円から275万円です。医療機関(法人)が口コミの投稿者から賠償を得た判決は、データベースにはありません。

1. 医療機関の口コミが特別に扱われる理由

  • 公共性が高い 医療は身体への侵襲を伴う高度に専門的なサービスであり、医療機関の口コミはこれから医療機関を選ぶ患者にとって非常に重要な情報だとされます(東京地方裁判所平成30年6月12日決定)。免許制度と公的保険制度で維持されている歯科医院の運営に関する口コミは公共性・公益目的がないとはいえないとした決定(同平成29年8月30日決定)、医師の診断能力と患者への応対態度は潜在的な患者にとって重要な関心事項だとした判決(同令和6年6月14日判決)があります。後者は、投稿に報復の目的が併存していたとしても「その主たる目的が公益を図ることにあったことは否定されないというべきである」としています。
  • 一定の批判は受忍すべきとされる 掲示板で産婦人科を推奨できないと論評した投稿について、その内容は「人の生命,身体,健康という重要な価値を守るために欠かすことのできない公共的な存在である医療機関としては甘受すべきもの」とした判決があります(東京地方裁判所令和2年12月21日判決)。口コミサイトは情報の非対称性を弱める手段となり得るとして、医療機関は一定の範囲内で批判的な口コミを受忍すべき立場にあるとした判決(同令和6年6月27日判決)、歯科治療は患者ごとに出来具合の評価や費用への納得度が異なるから、不満を述べる感想はある程度受忍することが社会的に求められているとした決定(東京高等裁判所平成30年6月18日決定)もあります。Googleマップに登録して広告をしていることを、受忍すべき理由に挙げた決定もあります(東京地方裁判所平成30年6月12日決定)。
  • 受忍には限りがある 一方で、口コミサイトの性質や原告が医師であることは社会的評価の低下や違法性阻却事由の判断で考慮すれば足り、開示の要件を加重する理由にはならないとした判決があります(東京地方裁判所令和3年12月23日判決、同令和5年6月30日判決)。病院の看護部長が職員を不当に扱っているとした口コミについても、医療機関は批判を一定程度甘受すべき立場にあるとしつつ、重要部分が真実と認められない投稿まで受忍すべきとはいい難いとして開示が認められています(同令和4年5月13日判決)。

口コミの読み方についても、判決は二つの方向を示しています。Googleマップの口コミの読者は多数の投稿を比較して評価の傾向を知るのが一般的で、具体的な事実が書かれず感想や評価だけの書込みは直ちに信用しないとした決定(大阪高等裁判所平成30年11月28日決定)がある一方、運営者自身が虚偽の口コミを容認しないとしている以上「閲覧者は,そこに記載された事実やその感想や評価等の前提となっている事実の重要部分は真実であるものとして口コミを閲覧すると考えられる」とした判決(東京地方裁判所令和2年11月18日判決)や、口コミの読者は熟読せずに短時間で読むのが一般的で、書かれていない背景事情を想定して読むとは認め難いとした判決(東京地方裁判所令和5年6月30日判決)もあります。結論を分けるのは、口コミに具体的な事実が書かれているかどうかです。

2. 裁判例の全体像

123件の内訳は、発信者情報開示を求めたものが112件(削除や損害賠償を併せて求めたものを含む)、削除だけを求めたものが6件、投稿者に損害賠償を求めたものが3件、検索結果の削除を求めたものが2件です。請求したのは、医療法人などの法人が64件、医師・歯科医師個人が55件、法人と医師の双方が4件です。

媒体別に見ると、認められなかった割合(一部認容は含まない)は次のとおりです。

  • Googleマップ等の地図サービスの口コミ 39%(44件中17件)、その他の口コミサイト 46%(13件中6件)
  • X・Instagram・Facebook・YouTube 30%(23件中7件)、爆サイ・5ちゃんねる等の掲示板 27%(37件中10件)

口コミで認められない割合が高いのは、感想や評価だけの投稿が多いためです。認められなかった43件の主な理由は、感想・意見にとどまる、または社会的評価を低下させない(受忍限度内を含む)が24件、書かれた事実が真実でないとはいえない(公益目的を含む)が10件、通信記録の消去やログインの時期など手続上の理由が5件、投稿が請求者を指すと分からないが2件、逮捕歴の検索結果の削除が2件です。

3. 開示・削除が認められた口コミ

  • 診療の内容について具体的な事実を書いたもの 診療が3分程度で患者の状況を把握しない、評価の高い口コミは作為によるとした精神科医院への口コミは、主観的な意見にとどまらない事実の摘示とされ、投稿に近い時期の診察記録から真実とは認められないとして開示が命じられました(名古屋地方裁判所令和3年9月22日判決)。指名した医師と別の医師に診察されたという口コミは主治医制の運用とクレーム記録から(東京地方裁判所令和3年10月18日判決)、医師が精神疾患の患者を指す俗語を悪い意味で使って説明したという口コミは診療記録等から(同令和5年6月30日判決)、ナースコールをしても看護師が1、2時間来ないのが普通だったという口コミは看護師の人数と呼出しの仕組みから(同令和5年1月26日判決)、それぞれ事実と異なるとされています。診察する医師がアルバイトばかり、受診するとすぐ血液検査をされるという口コミも、勤務医の経歴と検査の運用から開示が認められました(同令和4年12月23日判決)。
  • 料金や説明について具体的な事実を書いたもの 個室でない病室が使えるのに差額ベッド代の同意を強いられたという産婦人科の口コミ(東京地方裁判所令和6年9月9日判決)、診療日を確かめに来ただけで相談料を請求されたという口コミ(同令和5年1月13日判決)、被せ物の作り直しで治療費が倍かかった、医療ミスだという歯科の口コミ(同令和5年10月16日判決)が認められています。最後の判決は、各部分を個別に見れば感想や評価にとどまるようにも見える口コミを、全体として特定の事実を断定的に摘示するものと読み、再製作は適切な治療でも生じ得ること、追加費用を請求していなかったことを認定しました。治療費が高額なのに技術が低く、セラミックの歯がすべて短期間で虫歯になったという口コミは、開設以来の全診療録を調べても該当する患者がいないとして、仮の削除が命じられています(同平成30年4月26日決定)。
  • 受診したこと自体が疑わしいもの 休診日に受診したかのような口コミは、実体験に基づくかに疑義があるとして開示が(東京地方裁判所令和3年12月23日判決)、別の事案では意見の前提事実が重要な部分で虚偽だとして削除が認められました(同令和6年6月26日判決)。医院が元従業員に懲戒処分をした約5時間後に同じ IP アドレスから否定的な口コミ2件が連続して投稿され、元従業員やその親族は受診したことがなかった事案では、「本件各口コミは,実際には原告の診療を受けていない人物によりなされたと推認できる」とされています(東京地方裁判所令和2年11月18日判決)。同一人物が複数のアカウントを作り、複数の利用者が否定的に評価しているように装った事案では、「こうした投稿姿勢は著しく真摯性を欠いており,私怨を晴らすなどの不当な意図の存在がうかがわれる」として、公益目的が否定されました(同令和3年2月16日判決)。
  • さくら・やらせの断定 良い評価の口コミの大半はさくらだとした口コミは、医院がさくらを使って投稿させた事実の摘示とされました。医院が来院者に QR コードを示して投稿を促していたことは口コミの頻度の要因にすぎないとされています(東京地方裁判所令和4年11月17日判決)。
  • 掲示板や SNS での具体的な告発 患者に隠して不適切な治療をしているらしいという掲示板の投稿は、伝聞の形でも事実の摘示とされ(東京地方裁判所平成25年1月29日判決)、診療所で医療行為による死亡があったと示唆する投稿(同平成29年11月1日判決)、点滴から基準を超える有害な物質が出たとする Instagram の投稿(同令和4年7月20日判決)、美容クリニックが事故を隠して患者をだましているとする YouTube の説明欄の投稿(同令和5年12月25日判決)も、それぞれ事実と異なるとして開示が認められました。最後の判決では、手術前に合併症の記載のある同意書を示していたことなどから、重要な部分が真実でないとされています。
  • 医師個人への攻撃、私生活、なりすまし 医師の Instagram の写真に失敗が多いというコメントを1日に8件投稿した事案は、中傷自体を意図したもので公益目的とはいえないとされ(東京地方裁判所令和2年11月16日判決)、X で医師を人身攻撃した投稿(同令和4年12月9日判決)、爆サイで勤務医の容姿を揶揄した投稿(同令和5年4月27日判決)、病院名のスレッドで院長が職員と不適切な関係にあるとした投稿(同令和3年12月24日判決)も認められています。歯科医院の院長夫婦の不倫に触れた投稿は、専ら私生活に関するもので公共の利害に関する事実に当たらないとされました(同令和4年12月21日判決(令和4年(ワ)第22720号))。医師を装ったアカウントの投稿は、「なりすましによるものであることに照らして、上記の摘示事実が真実であると認められる余地はない」とされ(同令和4年12月21日判決(令和4年(ワ)第12222号))、医師の氏名と勤務先を名乗るアカウントがカルテの開示を拒まれたと書いた投稿も、開示の手続を説明して応じていた事実から開示が認められました(同令和4年9月29日判決)。なりすましについては「なりすまし被害」の記事もご覧ください。

4. 認められなかった口コミ

  • 感想や評価だけのもの クリニックの診察を「頓珍漢」、受診を「無駄足」とした口コミは、受診した患者の感想を記載したもので事実の摘示ではないとされ(東京地方裁判所令和7年10月24日決定)、診断や処方の具体的な内容に触れない否定的な口コミも同様とされました(東京高等裁判所令和8年2月5日決定)。院長の態度や話し方、人格を否定的に評した皮膚科の口コミ(東京地方裁判所令和6年1月30日判決)、歯科医師が怖いという口コミ(同令和4年1月11日決定)も、根拠となる具体的な事実がないとして認められていません。離職率が高い、小児科の医師に見逃しが多いという口コミも、数値や時期、病名、回数が書かれていないとして認められませんでした(大阪高等裁判所平成30年11月28日決定、神戸地方裁判所尼崎支部令和元年10月1日判決)。
  • 医療機関で通常あり得る事態 予約の遅れ、院長の離席、患者との言い争いを書いた矯正歯科の口コミは、通常想定される事態について誇張を交えた主観的な意見・感想にすぎないとされ、削除も開示も認められませんでした(東京地方裁判所令和6年6月27日判決)。待ち時間の長さや診察の短さへの不満も、投稿者がそう感じたことを述べたにすぎず、「本件のような口コミに一定の否定的な意見が掲載されることは,その性質上,やむを得ない」とされています(同令和3年6月23日判決)。予約を詰め込んでいるのではないかという推測は、証拠で直接立証できるものではなく意見・論評に類する表現とされました(東京地方裁判所平成29年8月30日決定)。
  • 医療の素人である患者の見解と読まれるもの 目薬の濃度を誤って処方したなどと眼科医師を批判した口コミは、「医療の素人である患者の立場からの一方的な見解を表明したものにすぎない」と読まれるとして削除が認められず、「ハズレ」「バカ」といった表現も、程度の甚だしい侮辱には当たらないとされました(大阪地方裁判所令和6年8月30日判決)。
  • 体験に基づく批判で、事実と異なることを示せないもの 院長の誤診を指摘した口コミは、社会的評価の低下は認められたものの、投稿者と目される患者が他の医療機関で別の診断を受けており、誤診でなかったことが立証されていないとして開示が認められませんでした(東京地方裁判所令和6年6月14日判決)。説明のないまま歯を半分削られたという口コミも、どの程度削るかを説明したかが明らかでないとして退けられています(同令和6年4月19日判決)。眼科の医師に大声で叱責されたという口コミでは、医師と看護師の陳述書に対し、投稿者が意見照会への回答で受診時の経緯を説明しており、その説明に一応の信用性があるとされました(同令和2年12月4日判決(令和2年(ワ)第2142号))。治療後に障害が残ったと書いた掲示板の投稿も、医師の陳述書と治癒を認める通知書だけでは真実に反すると断定できないとされています(同平成25年6月3日判決)。元従業員の嫌がらせだ、患者になりすました投稿だという医療機関側の主張も、裏付けが足りないとして退けられた例があります(東京地方裁判所平成30年6月12日決定、東京高等裁判所平成30年9月3日決定)。
  • 真実だったもの、医療機関の評価と関係しないもの 美容外科クリニックが医師会から注意を受けているという投稿は、理事長が戒告処分を受けていたことから主要な部分が真実とされました(東京地方裁判所平成27年5月20日判決)。所属医師の家庭内の傷害事件に触れた投稿は、医療行為の提供など病院の社会的活動とは関係がなく、病院の評価を下げないとされています(同令和4年6月1日判決)。
  • 職場としての口コミ 転職口コミサイトに書かれた休日の作業や賞与の投稿は、転職希望者にとって会社の実態を知るための有益な情報で、公共の利害に関する事実に属するとされ、開示は認められませんでした(東京高等裁判所令和3年3月24日判決)。産休制度がないとした投稿だけ開示が認められた例があります(名古屋地方裁判所令和2年5月25日判決)。

医療機関以外の事案も含めた、開示が認められなかった投稿の類型は「開示が認められなかった投稿の類型」にまとめています。

5. 星だけの評価

星の評価だけを付けた口コミについて、開示や削除を認めた判決はデータベースにありません。診療所2か所への口コミ15件の開示と削除を求めた事案では、星一つの評価を付けただけのものを含め、いずれも受忍限度を超えて社会的評価を低下させたとは認められませんでした(東京地方裁判所令和5年5月10日判決(令和3年(ワ)第21882号))。最低点の評価に感想を添えた口コミも、最低点と相まって否定的な印象は与えるが、根拠となる具体的な事実がないため、読者が直ちにその評価を信用したり共感したりするとは考え難いとされています(大阪高等裁判所平成30年11月28日決定)。

一方、理由の書かれていない否定的な書込みでも、多数が集積した場合には同種のものと合わさって社会的評価が低下することもあり得るとした決定があります。その事案では、他にどのような書込みがあるかの疎明が十分でないとして認められませんでした(神戸地方裁判所尼崎支部平成30年5月25日決定)。低評価が続く場合に口コミ業者や同業者による投稿だと主張しても、それをうかがわせる具体的な事情がなければ考慮されません(東京地方裁判所令和5年5月10日判決、同令和2年12月4日判決(令和2年(ワ)第2142号))。投稿の時刻や同じ IP アドレスからの連続投稿といった具体的な事情を示せるかどうかが分かれ目です(東京地方裁判所令和2年11月18日判決)。

6. 削除が認められる場合

削除を求めた12件(開示と併せて求めたものを含む)のうち、削除が認められたのは4件です。治療費が高額で技術が低いという口コミの仮の削除(東京地方裁判所平成30年4月26日決定)、休診日の受診を前提とする口コミの削除(同令和6年6月26日判決)、新型コロナウイルスの患者の受入れを拒否し虚偽の説明をしているという病院の口コミと X の投稿の削除(同令和5年3月22日判決)、Yahoo!知恵袋の施術の効果がすぐ失われたという投稿の削除(同平成28年1月22日判決)です。いずれも、書かれた事実が資料によって事実と異なると認められたものです。

削除の基準について、口コミサイトで批判的な内容の削除を容易に認めると口コミサイトの社会的意義が失われるとして、削除には「削除しなければ原告に不合理な負担を負わせることになると認められることが必要である」とした判決があります(東京地方裁判所令和5年5月10日判決)。営業権の侵害を理由とする削除は認められず、名誉権に基づいて権利侵害の明白性を示す必要があるとした判決(同令和6年4月19日判決)、病院のブログ盗用を指摘した X の投稿について、真実でないことの明白性と重大で回復困難な損害のおそれまで求めた判決(同令和3年1月19日判決)もあります。他方、地図検索サービスの口コミについて、重大で回復困難な損害のおそれは不要とした判決があります(同令和6年6月26日判決)。

Googleマップではオーナーが口コミに返信できるため、返信による反論ができることも判断材料にされています(東京地方裁判所令和5年5月10日判決)。ただし、反論までに多数の閲覧があり得ること、「反論には事業者としての立場に由来する内容的な制約等があるから」反論できることで保全の必要性はなくならないとした決定(同平成30年4月26日決定)、返信による反論が可能でも開示を受ける正当な理由は否定されないとした判決(名古屋地方裁判所令和3年9月22日判決)もあります。

7. 手続で結論を分けた点

認められた事案の多くで、医療機関側は診療録、予約や休診日の記録、主治医制の運用、看護師の配置、同意書、料金の資料を出し、口コミの事実と異なることを示しています。医師や院長の陳述書だけでは、投稿者の説明と対立したときに足りないとされることがあります(東京地方裁判所令和2年12月4日判決(令和2年(ワ)第2142号))。見逃しが多いと書かれた医師が自らその旨を申告するとは考えにくいから、陳述書は判断の決め手にならないとした決定もあります(神戸地方裁判所尼崎支部平成30年5月25日決定)。

Googleマップや X はログインした状態で投稿する仕組みのため、投稿の直前のログインの記録から接続プロバイダの契約者を特定する方法が、医療機関の事案でも多く認められています(東京地方裁判所令和3年10月28日判決など)。一方、投稿の約8か月から10か月後のログイン(同令和4年8月3日判決(令和4年(ワ)第5207号))や約1年7か月から10か月後のログイン(同令和4年1月17日判決)の記録は対象外とされ、運営会社から IP アドレスの開示を受けた時点で接続プロバイダが通信記録を消去していた事案では、内容を判断されずに請求が棄却されました(同令和3年3月4日判決)。Google が電話番号を保有しているかについては、保有を推認した判決がある一方、保有の立証がないとして電話番号の開示を認めなかった判決もあります(東京地方裁判所令和2年11月18日判決、同令和6年4月19日判決)。Google に対する手続の期間の目安は「Googleマップの口コミの投稿者を特定する方法」をご覧ください。

8. 損害賠償の額

データベースに収録している医療機関・医師の事案のうち、投稿者に損害賠償を命じた判決は3件で、いずれも医師個人が請求したものです。医療機関(法人)が口コミの投稿者から賠償を得た判決は、データベースにはありません。

  • 詐欺被害を扱う掲示板に医師の顔写真と犯罪行為を摘示する記事を投稿した事案: 慰謝料100万円、投稿者の特定にかかった弁護士費用43万2000円(全額)、訴訟の弁護士費用14万3000円の計157万5000円(東京地方裁判所令和6年2月8日判決)。原告が医師で就職に影響が出る可能性があることも慰謝料の事情とされました。
  • 元家主が医師の私生活を述べる動画を氏名、勤務先、顔写真とともに繰り返し投稿した事案: 慰謝料250万円と弁護士費用25万円の計275万円(東京地方裁判所平成25年7月19日判決)。
  • 元従業員の夫が歯科医師について医療費の不正請求などを X に約2年間投稿した事案: 慰謝料80万円(千葉地方裁判所令和6年9月26日判決)。

口コミを削除しないことを理由に運営者に1日10万円の損害賠償を求めた請求は、口コミが名誉を毀損しないとして退けられています(神戸地方裁判所尼崎支部令和元年10月1日判決)。法人の無形損害として認められる額の目安は「会社・店舗への誹謗中傷」、判決の金額の一覧は「ネット上の誹謗中傷の慰謝料・損害賠償額の一覧」、投稿者の特定にかかった費用をどこまで取り戻せるかは「投稿者の特定にかかった費用は取り戻せるか」をご覧ください。

9. ご相談について

クリニック、病院、歯科医院に対する口コミや投稿の削除、投稿者の特定、損害賠償をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。口コミの内容と、書かれた事実が実際と異なる点をお知らせいただければ、上記の裁判例に照らして見通しをお伝えします。費用についてはFeeをご覧ください。

関連する解説

10. 引用判決の一覧