X(旧Twitter)の誹謗中傷の投稿者を特定する方法と投稿の削除

X(旧Twitter)は匿名のアカウントで投稿できるため、名誉毀損や侮辱にあたる投稿、住所や逮捕歴を書いた投稿、なりすまし、写真の無断転載などの被害が起きやすい場所です。投稿者に責任を問うには投稿者を特定する必要があり、そのための手続が発信者情報開示請求です。投稿を消すには、Xに対する削除請求を行います。

この記事では、Xの投稿について投稿者を特定する場合の仕組みと流れ、期間の目安、開示が認められる基準、裁判例、削除請求、特定後にできることを整理します。Xには、投稿ごとの記録を残さない「ログイン型」という固有の仕組みがあり、他のサイトとは手続の組み立てが異なります。

要点

  • Xは、投稿ごとのIPアドレスを記録していません。保有しているのは、ログイン時のIPアドレスと日時、アカウントに登録された電話番号またはメールアドレスです。氏名や住所の登録は求められていません。
  • 2022年10月に施行された改正法により、ログイン時の通信(侵害関連通信)が開示の対象になることが明文化されました。裁判所は、開示の対象を原則として「投稿に最も時間的に近いログイン1回分」としています。
  • Xから電話番号の開示を受けられれば、接続プロバイダのログの保存期間に左右されずに投稿者を特定できる場合があります。Xに電話番号の開示を命じた判決は多数あります。
  • 削除については、逮捕歴に関するツイートの削除を認めた最高裁判所令和4年6月24日判決以降、Xに投稿の削除を命じる判決が続いています。Xは、決定が出ても間接強制の申立てまで開示に応じないことが長く続きましたが、最近は決定後に速やかに開示する例が増えています。

1. Xの投稿で問題になる類型

Xの投稿をめぐる事件で多いのは、次の類型です。どの類型にあたるかで、開示や削除が認められる基準が変わります。

  • 名誉毀損 具体的な事実を書いて社会的評価を下げる投稿(不正をした、犯罪に関与した、など)。事実が真実かどうかが争点になります。
  • 侮辱(名誉感情の侵害) 事実を書かずに罵る投稿。「社会通念上許される限度を超える侮辱」にあたる場合に限って認められます。
  • プライバシーの侵害 住所や勤務先を書いた投稿、過去の逮捕歴を書いた投稿など。
  • なりすまし 他人の名前や写真を使ったアカウントで、本人が書いたように見える投稿をするもの。
  • 写真・画像の無断転載 本人が撮影した写真やイラストを無断で投稿するもの。著作権の侵害として扱われ、名誉毀損より争点が少ないのが特徴です。
  • リポスト(リツイート) 他人の投稿をそのまま拡散する行為も、元の投稿の内容について責任を問われることがあります。

2. Xが保有している情報と「ログイン型」の仕組み

保有している情報 Xは、アカウントの作成時に氏名や住所の登録を求めていません。Xが保有しているのは、①ログイン時のIPアドレスと日時、②登録された電話番号、③登録されたメールアドレスです。電話番号とメールアドレスは、どちらで登録されたかによって、一方しか保有していないことがあります。

投稿時のIPアドレスがない 掲示板などでは投稿のたびにIPアドレスが記録されますが、Xはログインしたときの通信記録だけを残し、個々の投稿の通信記録を保存していません。このような仕組みのサービスを「ログイン型」と呼びます。ログイン自体は誰の権利も侵害しないため、ログイン時の情報が「権利侵害に係る発信者情報」にあたるのかが長く争われ、裁判所の判断も分かれていました。

2022年10月の改正法 この問題を解決するため、2022年10月1日に施行された改正プロバイダ責任制限法(2025年4月施行の改正で情報流通プラットフォーム対処法に改称)は、投稿と「相当の関連性」のあるログイン時の通信を「侵害関連通信」として、開示の対象になることを明文化しました。あわせて、発信者情報開示命令という新しい手続が設けられました。

開示されるのは原則「投稿に最も近いログイン1回分」 改正法のもとで、裁判所は、開示の対象となるログインを投稿ごとに原則1つに絞っています。東京地方裁判所令和5年11月10日判決は、1か月分のログイン情報の開示を求めた事案で、次のように述べて範囲の拡張を認めませんでした。

侵害情報の送信と相当の関連性を有するログイン時の送信は、原則として1つであり、通常は、侵害情報の送信と最も時間的に近接するログイン時等の送信によって侵害情報の送信がなされた蓋然性が高い

ただし例外もあります。東京地方裁判所令和6年7月22日判決は、投稿に近い57件のログイン通信からは投稿者を特定できなかった事案で、58番目のログイン通信も開示の対象になると判断しました。また、東京地方裁判所令和5年10月31日判決は、Xのログイン記録の保存期間の関係で、投稿から相当期間が経った後のログインしか残っていない事案について、他に適切な特定手段がないとして、そのログインを開示の対象と認めました。

実務上の意味は2つあります。第一に、Xから開示されるIPアドレスは通常1回分なので、そのログインが接続プロバイダ側で契約者にたどり着けるものかどうかが、特定の成否を左右します。第二に、Xのログイン記録にも保存期間があるため、投稿から時間が経つほど「投稿に最も近いログイン」の記録が残っていない可能性が高くなります。

3. 投稿者を特定する手続の流れ

投稿者にたどり着く経路は、大きく2つあります。

IPアドレス経由 Xからログイン時のIPアドレスと日時の開示を受け、そのIPアドレスを割り当てていた接続プロバイダ(携帯電話会社や固定回線の事業者)に、契約者の氏名・住所の開示を求めます。

電話番号経由 2020年8月の総務省令改正で、電話番号が開示対象の発信者情報に加わりました。Xから電話番号の開示を受ければ、携帯電話会社への照会で契約者を特定できる場合があります。接続プロバイダのログ保存期間に左右されない点が利点です。Xに電話番号の開示を命じた判決は多数あり、たとえば東京地方裁判所令和5年5月11日判決は、勤務先と氏を示して金銭上の不正を述べた投稿について、アカウント登録者の電話番号の開示を命じました。一方、電話番号を登録していないアカウントもあるため、メールアドレスやIPアドレスと並行して請求するのが通常です。ただし、登録されているメールアドレスは、Gmailなどで取得した本人にたどり着けないアドレス(いわゆる捨てアド)であることが多く、メールアドレスだけで投稿者を特定できることは少ないです。

手続の種類 発信者情報開示命令の申立て(非訟手続)、仮処分の申立て、本案訴訟(発信者情報開示請求訴訟)があります。Xの運営会社は米国法人(X Corp.)ですが、現在は国内で手続に対応しており、かつてのように海外への送達に時間がかかることはありません。開示の実行については、Xはつい最近まで、開示を命じる決定が出ても、間接強制(決定に従わない場合に金銭の支払を命じる手続)を申し立てなければ発信者情報を開示しないのが通常でした。ただし、2026年9月ごろから、決定後に速やかに開示するようになる変化が見られます。

4. 期間の目安

Xに対する開示命令の手続は、申立てからXの開示まで2か月程度が目安です。その後の接続プロバイダに対する手続を含めると、投稿者の氏名・住所が分かるまで3〜4か月程度を見ておく必要があります。接続プロバイダのログは数か月程度で消えることが多く、Xのログイン記録にも保存期間があるため、投稿に気づいたら、まず投稿のURLと表示画面を保存し、早い段階で見通しを立てることが重要です。

5. 開示が認められる基準

発信者情報の開示が認められるには、①権利侵害の明白性(投稿によって名誉権などの権利が侵害されたことが明らかであること)と、②開示を受けるべき正当な理由(損害賠償請求などのために投稿者の情報が必要であること)が必要です。Xの事件で実際に争点になるのは、主に次の点です。

同定可能性 投稿が自分を指していると、一般の閲覧者に分かるかどうかです。Xでは本名ではなくアカウント名で活動している人が多いため、アカウント名に向けられた投稿が「本人」への投稿といえるかが問題になります。東京地方裁判所令和6年7月18日判決は、オンラインゲームの仲間内で知られたアカウントに向けた投稿について、ゲーム内でそのアカウントを知る人には本人と分かるとして同定可能性を認めました。逆に、投稿の文面だけでは誰を指すのか客観的に定まらない投稿は、本人に向けたものと認められません(東京地方裁判所令和6年8月8日判決)。返信(リプライ)の場合は、元の投稿や前後のやり取りとあわせて誰を指すかが判断されます(東京地方裁判所令和7年12月23日判決)。

侮辱の限度 事実を書かずに罵る投稿は、「社会通念上許される限度を超える侮辱」にあたる場合にだけ、名誉感情の侵害として開示が認められます。東京高等裁判所令和7年1月16日判決は、配信者に向けた一連の投稿のうち、社会的な偏見のある障害があると述べた投稿は名誉感情の侵害が明らかだとして開示を命じる一方、「ゴミクズ」のような罵倒や、言動への否定的な評価にとどまる投稿は開示を認めませんでした。不快な投稿のすべてが開示の対象になるわけではありません。

意見・論評 公的な立場で発信した内容に対する批判は、表現が強くても、意見・論評の域を出ないとして違法性が否定されることがあります。東京地方裁判所令和6年6月19日判決は、医師で地方議会議員の原告がワクチン接種を勧めた投稿を引用して強く非難した投稿について、意見・論評の域を逸脱しないとして開示を認めませんでした。

リポストの責任 他人の投稿をコメントなしでリポストした場合でも、元の投稿が名誉を毀損するものであれば責任を負うとした裁判例があります。大阪高等裁判所令和2年6月23日判決は、リポストした者は元の投稿の内容をフォロワーが読める状態に置くことを認識している限り、次のように述べて責任を認めました。

当該投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,当該投稿について不法行為責任を負う

また、東京地方裁判所令和5年12月1日判決は、私人の住所を含む投稿をリポストした者について、リポストにも拡散の機能があるとして、発信者情報の開示を命じました。

6. 裁判例

当事務所の裁判例データベースには、Xに関する裁判例を523件収録しています(2026年10月現在)。本記事で触れた裁判例は次のとおりです。各リンク先に、事案の概要と判決理由の骨子があります。

7. 投稿の削除請求

Xへの申出 Xには、ヘルプセンターからの報告と、法的な削除要請のフォームがあります。2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、Xを含む大規模なプラットフォーム事業者には、削除の申出を受け付ける窓口を整備し、申出に対する判断の結果を一定の期間内(原則14日以内)に通知する義務が課されました。もっとも、名誉毀損やプライバシー侵害の投稿が申出だけで削除されることは少なく、裁判所の手続が必要になるのが通常です。

裁判所の手続 申出で削除されない場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てるか、削除請求の訴訟を提起します。Xは、裁判所の決定や判決が出れば削除に応じています。なお、アカウント全体の削除や非表示を求める請求は、問題のない投稿まで消すことになるため、認められにくい傾向があります(東京地方裁判所令和6年3月12日判決、同令和5年11月13日判決)。

逮捕歴に関する投稿 過去の逮捕を伝える投稿は、最高裁判所令和4年6月24日判決が、逮捕の事実を公表されない法的利益が公表を続ける理由に優越する場合に削除を求められるとの基準を示して以降、東京地方裁判所や大阪地方裁判所で削除を命じる判決が続いています。詳しくは「逮捕歴・前科に関するネット上の記事や投稿の削除について」をご覧ください。

削除と開示の順序 投稿者に損害賠償を求めるつもりがある場合、先に投稿が削除されると、開示請求に必要な証拠が失われ、Xのログの確認にも影響することがあります。投稿のURL、表示画面、投稿日時を保存した上で、開示請求を先行させるか、削除と開示を並行して進めるかを検討します。

8. 投稿者を特定した後にできること

投稿者が特定できた後は、次の対応が考えられます。

  • 損害賠償請求(示談交渉、または訴訟)
  • 投稿者自身による投稿の削除と、再投稿しないことの約束
  • 悪質な場合の刑事告訴(名誉毀損罪、侮辱罪など。侮辱罪は2022年7月に法定刑が引き上げられました)

開示請求にかかった弁護士費用の一部を損害として請求できる場合もありますが、認められる範囲は事案によります。

9. ご相談について

Xの投稿の削除や投稿者の特定をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。投稿のURLや画面の保存などの証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。費用についてはFeeをご覧ください。

関連する解説

資料

本記事で取り上げた裁判例には、当事務所が代理人として関与した事件が含まれます。