匿名で活動していたのに本名を書かれた、住所や勤務先、病気や家族のことをさらされた。こうした投稿は、書かれた内容が本当でも違法になることがあります。プライバシー侵害は、評価を下げたかではなく、知られたくない私生活上の事実を公開したこと自体が問題になるからです。ただし、氏名だけの書き込み、本人が自ら公開していた情報、具体性のない書き込みなどは、侵害が否定されています。
この記事は、当事務所の裁判例データベースのうちプライバシー侵害が争点になった408件(判決402件・決定6件、2013年〜2026年)を読み、どのような情報が保護され、どのような場合に否定されたのかを、情報の種類ごとに整理したものです。逮捕歴・前科は「逮捕歴・前科の投稿の削除」に、投稿が誰のことか分かるかという問題は「ハンドルネームへの中傷と同定可能性」にまとめています。
要点
- プライバシー侵害は、私生活上の事実(またはそう受け取られるおそれのある事柄)で、一般の人の感じ方を基準に公開を望まず、まだ知られていない事柄を公開したときに問題になり、公表されない利益と公表する理由を比べて違法かどうかが決まります。
- 名誉毀損と違い、書かれたことが真実でも違法になります。逆に、真実でない整形の噂のように、事実らしく受け取られるおそれがあれば侵害とされた例もあります。
- 逮捕歴・前科を除く331件のうち、侵害を認めた判決は249件、一部で否定した判決は26件、全部否定した判決は55件です。匿名や活動名と結び付けた本名は肯定52件・否定2件、住所は肯定43件・否定4件で、病歴・障害・性的指向は、真実と受け取られないなどの事情がない限り認められています。
- 否定された81件の理由は、具体性がない・推測や質問にとどまる(25件)、誰の情報か結び付かない(23件)、本人が公開していた・既に知られていた(22件)、氏名や年齢など秘匿性が低い(11件)、公共性があり公表の理由が上回る(10件)が中心です。
- 投稿者などにプライバシー侵害を含む賠償を命じた17件の認容額は6万6000円から275万円、中央値は62万7600円です。17件中11件で、投稿者の特定にかかった費用の全部または一部が加えられています。
1. どのような場合にプライバシー侵害になるか
三つの要件と比較衡量 東京地方裁判所平成28年11月30日判決(平成27年(ワ)第1973号)は、プライバシー侵害には「公開された内容が私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であり,一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないと認められるであろう事柄であること,かつ一般の人々に未だ知られていないものであることを要する。」としています。この定式は東京地方裁判所昭和39年9月28日判決(いわゆる「宴のあと」事件)に由来し、データベースの多くの判決がこれに沿っています。そのうえで、公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比べ、前者が上回るときに違法とされます(最高裁判所平成15年3月14日判決)。
名誉毀損との違い 名誉毀損は社会からの評価を下げることが要件で、公共性・公益目的・真実性がそろえば違法でなくなります。プライバシー侵害では、真実であることは言い訳になりません。元家主が元入居者の私生活や家賃の滞納を氏名・勤務先・顔写真とともに動画で投稿した事案で、東京地方裁判所平成25年7月19日判決(平成24年(ワ)第23429号)は「家賃の滞納その他の上記摘示事実が真実であるかどうかという点は,被告の不法行為責任に消長を来すものではない」としました。逆に、真実でない事柄でも、整形の投稿について「原告が整形をしているということは,一般人に私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事実といえる」として侵害を認めた例があります(同令和3年7月16日判決(令和3年(ワ)第602号))。真実だという反論への対処は「真実性の抗弁」をご覧ください。
誰の情報か分かること プライバシー侵害も、投稿が自分の情報だと結び付くことが前提です。ただ、東京高等裁判所令和4年12月21日判決(令和4年(ネ)第4031号)は、氏名のない携帯電話番号の投稿について、「プライバシー権の侵害は、一定の主観的領域にとどまるべき情報が外部に公表されたか否かという基準によって判断されるべきもの」として、名誉毀損でいう同定可能性は要しないとし、開示を認めなかった原判決を取り消しました。
芸能人・経営者・議員 東京地方裁判所平成26年2月27日判決(平成25年(ワ)第27956号)は、「芸能人であることのみを理由に,直ちに,一般人に比してプライバシー権の侵害が成立する範囲は狭くなる理由を見出すことができない」としました。代表取締役の社内不倫や妻の病気も、公表されない利益が保護されるとされています(同平成26年1月31日判決(平成25年(ワ)第29013号))。これに対し、統一地方選挙の時期に現職の都議会議員の行状を報じた週刊誌記事は、公共性・公益性と掲載の必要性から侵害が否定されました(同令和6年3月26日判決(令和5年(ワ)第9953号))。
2. 数字で見るプライバシー侵害の裁判例
408件のうち、発信者情報開示を求めたものが322件、削除や差止めを求めたものが43件、損害賠償だけを求めたものが37件です。東京地方裁判所が373件を占めます。媒体は(重複あり)X が67件、5ちゃんねる・2ちゃんねるが67件、爆サイ.com が62件、ブログが31件、ホストラブが22件、Google 検索が12件、Instagram が9件、YouTube が6件です。
逮捕歴・前科など刑事事件の情報が中心の判決が53件、プライバシーを実質的に判断していない判決が24件あり、残る331件を以下で扱います。331件のうち発信者情報開示の294件では、開示を全部認めた判決が178件、一部認めた判決が90件、認めなかった判決が24件(ほか2件は削除とあわせた請求で退けられたもの)です。損害賠償の28件では、一部でも賠償を認めた判決が21件です。
3. 情報の種類ごとの傾向
情報の種類ごとに、侵害を認めた判決と否定した判決の数を示します(逮捕歴・前科を除く331件を読んで分類。1件の判決に複数の情報が含まれるため重複あり)。
- 匿名・活動名と結び付けた本名(肯定52件/否定2件) 東京地方裁判所令和3年1月19日判決(令和2年(ワ)第5248号)は、「氏名や住所は個人を特定する直接的かつ基本的な情報の一つであるところ,インターネット上で氏名や住所をあえて公開せずにハンドルネーム等を用いて活動する者にとって,これらは一般に公開を望まない私生活上の事柄であると解することができ」るとしました。以前に別の掲示板で実名を明かされていても、「過去に特定の掲示板において実名を明かされた事実があるからといって,その実名が公知の事実であるとみることはできない。」とされています(大津地方裁判所彦根支部平成27年1月22日判決(平成26年(ワ)第125号))。匿名アカウントの持ち主を明かす投稿は、本人が事務所のサイトで名前を出していても侵害とされています(東京地方裁判所令和3年11月11日判決(令和3年(ワ)第16758号))。否定された2件は、下の名前だけで、結び付ける過去の投稿が削除されていたもの(同令和3年2月25日判決(令和2年(ワ)第26673号))などです。
- 氏名だけ(肯定8件/否定13件) 本名を伏せて活動していない人の氏名は、それだけでは保護されにくくなります。氏名と年齢だけの投稿について、これらは「社会生活において第三者への開示が求められることも多い性質のもの」とされ(東京地方裁判所令和4年10月24日判決(令和4年(ワ)第15249号))、「そもそも人の氏名は、それ自体は私生活上において、一般的に明らかにされている情報であって、これが明らかにされたとしても直ちにプライバシーが侵害されるものであるとはいえない」とした判決もあります(同令和5年2月16日判決(令和4年(ワ)第28071号))。他方、ハンドル名で活動する人の氏名・生年月日・出身校の投稿では、「氏名は個人を識別特定する極めて有力な情報であり,他に同姓同名の者がいる可能性をもってその氏名の開示によるプライバシー侵害が直ちに否定されるものではない」とされています(同平成28年3月17日判決(平成27年(ワ)第413号))。氏名が私生活上の事実や他の情報と結び付くかが分かれ目です。
- 住所・自宅(住所 肯定43件/否定4件、自宅の写真・建物名 肯定9件/否定2件) 東京地方裁判所平成29年6月28日判決(平成29年(ワ)第10360号)は「他者の自宅住所を正当な理由なく不特定多数の第三者に公表する行為は,プライバシー権を侵害するものというべきである。」とし、法人の登記に載っている代表者の住所でも保護されるとしました。学校法人の理事長の住所でも、掲示板に載せれば「不特定多数の者が即時かつ容易にこれを知ることができるようになる」とされています(東京高等裁判所平成29年11月1日判決(平成29年(ネ)第3590号))。部屋番号がなくても「原告の居住する建物の所在地だけでも、プライバシーに属する情報として保護に値するものといえる。」とされています(東京地方裁判所令和6年5月10日判決(令和5年(ワ)第5000号))。否定されたのは、実家の県名だけの投稿(同平成27年11月13日判決(平成27年(ワ)第15933号))や、住所と氏名が別々のスレッドに間隔を置いて投稿され、関連付けて認識することは困難とされたもの(同令和3年5月31日判決(令和2年(ワ)第31568号))などです。
- 勤務先・職業(勤務先 肯定24件/否定4件、性風俗店などでの勤務 肯定14件/否定2件) 公表していない勤務先を本名と結び付ける投稿は、多くが侵害とされています。源氏名と本名を結び付けた投稿について、東京地方裁判所平成27年6月18日判決(平成26年(ワ)第34762号)は「性風俗業は、社会通念上も、社会的偏見の強い職業であると認められるから、一般人の感受性を基準としても、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないものであるというべきであり」としました。否定例は、妻の勤務先などの記載が具体的・詳細でないもの(同平成27年9月1日判決(平成26年(ワ)第31772号))、本人の了承の下で氏名と勤務先がネット上に公開されていたもの(同平成28年3月25日判決(平成27年(ワ)第26525号))、本人が閲覧者を限定せずに公開していた風俗店勤務の SNS アカウントを示したもの(前記の同令和5年2月16日判決)です。
- 電話番号・連絡先・SNS アカウント(肯定25件/否定4件) 前記の東京高等裁判所令和4年12月21日判決は「一般に、個人が使用している携帯電話の番号は、その性質上、不特定多数の第三者に開示されることを望まない情報であり、プライバシー権によって保護されるべき情報に当たる」とし、仕事用の名刺に載せている番号でも保護されるとしました。否定例は、番号を知る知人が見ても本人の番号と想起する可能性が低いとされたもの(東京地方裁判所令和4年7月22日判決(令和4年(ワ)第876号))などです。
- 病歴・障害(病歴 肯定13件/否定2件、障害 肯定3件/否定0件) 入院先について「入院先の病院の名称は一般人の感受性を基準にして,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないと認められる事柄であり,一般の人々に未だ知られていない事柄であるといえる。」とされ、通院先・主治医・病名を書いた投稿も侵害とされました(東京地方裁判所令和2年8月21日判決(令和元年(ワ)第32207号))。障害の一部を自ら公にしていても、「少なくとも原告が障害認定を受けている事実が本件記事の投稿以前に公にされていたとは証拠上認められない」として侵害が認められています(同令和4年7月19日判決(令和4年(ワ)第9335号))。否定された2件は、読者が真実と受け取らないとされた感染の投稿(同令和4年2月3日判決(令和3年(ワ)第21938号))と、病気を装っているという意味に読まれ名誉毀損とされたもの(同令和4年6月23日判決(令和4年(ワ)第4578号))です。
- 性的指向・性別に関する経歴(肯定3件/否定0件) 性別の取扱いを変更して周囲に知られずに暮らしていた人の経歴を明かした投稿(東京地方裁判所平成30年6月21日判決(平成29年(ワ)第31645号))、一般の個人の性的指向をさらした投稿(同令和4年1月20日判決(令和3年(ワ)第24824号)。「公共の事実とは関係がなく,公益目的があるとはいえない」)は、いずれも侵害とされています。
- 家族・交際・離婚・不貞(家族・子 肯定29件/否定5件、婚姻・交際・不貞 肯定46件/否定8件) 子の通う学校(前記の東京地方裁判所平成27年6月18日判決)、子がいることやひとり親であること(同令和4年9月16日判決(令和4年(ワ)第13953号))、秘匿の必要性が高いとは限らない交際相手の存在(同令和3年11月25日判決(令和3年(ワ)第20484号))が侵害とされています。否定例は、不倫を問う投稿の中の家族構成の記載を一般に秘匿したい気持ちが強い情報とはいえないとしたもの(同令和4年1月19日判決(令和3年(ワ)第12463号))、結婚・同棲の投稿が具体的・詳細でないとしたもの(同平成27年12月8日判決(平成27年(ワ)第10300号))などです。
- 学歴・経歴・年齢・整形・出自(学歴 肯定7件/否定2件、経歴 肯定16件/否定3件、年齢 肯定10件/否定3件、整形・身体 肯定20件/否定3件、出自 肯定4件/否定0件) 医学部受験に多数回不合格になった事実は、医師としての資質と結び付かないとして侵害とされ(東京地方裁判所令和6年3月29日判決(令和5年(ワ)第25354号))、整形については「整形手術をしたのかどうかは一般的に私生活上の事実に関する情報であり」とされています(前記の同平成27年12月8日判決)。否定例は、本人承諾のうえ部のホームページに表示されていた出身校(同令和4年12月21日判決(令和4年(ワ)第18201号))、通称と年齢で検索すると多数表示され「一般の人々に未だ知られていない事柄であると認めるに足りない」とされた年齢(同令和6年1月18日判決(令和5年(ワ)第70080号))です。
- 逮捕歴・前科(53件) 検索結果の削除は、公表されない利益が優越することが「明らか」な場合に限るとされ(最高裁判所平成29年1月31日決定(平成28年(許)第45号))、X の投稿については「明らか」を要しないとされました(最高裁判所令和4年6月24日判決(令和2年(受)第1442号))。逮捕歴の削除請求は、この判決まで(同判決を含む)の21件で一部でも認められたのが3件だったのに対し、その後の12件では11件で認められています。詳しくは「逮捕歴・前科の投稿の削除」をご覧ください。
4. 侵害が否定された理由
少なくとも一部の投稿でプライバシー侵害が否定された81件(全部否定55件・一部否定26件)の理由を、重複を含めて分類すると次のとおりです。
- 具体性がない、推測や質問にとどまる(25件) 私生活上の事項を他人に尋ねるだけの投稿(東京地方裁判所平成26年5月30日判決(平成25年(ワ)第27608号))、成人向け作品の出演者と同一人物かを尋ねる投稿(同令和2年11月24日判決(令和2年(ワ)第6156号))、夫の不倫が真実ならという仮定を述べる投稿(同令和3年10月6日判決(令和2年(ワ)第27445号)。「プライバシー権の侵害の前提となるプライバシーの公表行為自体がないものといわざるを得ない」)が否定されています。ただし、疑問の形をとっていても内容から事実を示すと読まれれば侵害とされ(前記の同令和4年9月16日判決)、結論は文面と前後の流れで分かれます。
- 誰の情報か結び付かない(23件) 前記の東京地方裁判所令和3年5月31日判決、同令和4年7月22日判決のように、投稿だけでは本人の情報と分からないものです。本名をほのめかす投稿の5日後の投稿で初めて本人と結び付いた事案では、「権利侵害の明白性は,あくまで当該投稿時点において判断されるべきものであるから,投稿2を考慮して権利侵害の明白性を判断することは相当ではない」として、前の投稿の開示は認められませんでした(同平成29年8月30日判決(平成29年(ワ)第12188号))。
- 本人が公開していた、既に知られていた(22件) 前記の出身校や年齢のほか、本人がアカウントの管理者であることを明らかにし、公開記事や SNS でも示していた氏名・旧姓などが否定されました(東京地方裁判所令和5年3月14日判決(令和4年(ワ)第7714号))。ただし、公開の範囲と目的が違えば保護は残り、24時間で消える Instagram のストーリーで公開を許した写真を匿名掲示板に貼った投稿は侵害とされました(同令和3年3月4日判決(令和2年(ワ)第23135号))。写真については「写真の無断転載」もご覧ください。
- 秘匿性が低い(11件) 氏名だけ、年齢、家族構成の一般的な記載などです(前記の同令和4年10月24日判決、同令和4年1月19日判決)。
- 公共性があり、公表の理由が上回る(10件) 前記の議員の記事のほか、ネット上で注目を集める活動をする人への仮処分や強制執行の状況の公表は、社会的意義や必要性が相当程度あるとして否定されました(東京地方裁判所令和8年8月18日判決(令和7年(ワ)第21237号))。著名な経営者の新居の所在を報じた記事(前記の同平成28年11月30日判決)や、官報や登記で閲覧できる会社の破産の事実(東京高等裁判所平成30年7月2日判決(平成29年(ネ)第5296号))も同じです。
5. 開示・削除・賠償の結論と損害額
開示 開示請求では大半で開示が認められ、名誉毀損を判断せずプライバシー侵害で足りるとした判決もあります(前記の東京地方裁判所令和3年1月19日判決)。書かれたことが本当かどうかの争いに入らずに済む場合があります。
削除 逮捕歴以外でも、人格権に基づく削除が認められています。事件の被害者の家族が、被害者の死亡の経緯を書いた掲示板の投稿の削除を求めた事案では、家族のプライバシーとして削除が命じられ(東京地方裁判所令和5年4月14日判決(令和4年(ワ)第13086号))、不倫を示し続ける Facebook・Instagram のアカウントについてはアカウント自体の削除が命じられました(同令和5年6月15日判決(令和4年(ワ)第32267号))。手続は「投稿の削除」をご覧ください。
賠償額 投稿者などにプライバシー侵害を含む賠償を命じた判決17件の認容額は、6万6000円から275万円で、中央値は62万7600円です。慰謝料の額が分かる13件では3万円から250万円、中央値は50万円です。多くは名誉毀損や侮辱とあわせたものです。主な例は次のとおりです。
- 氏名・住所・勤務先・顔写真を私生活の動画とともに削除後も繰り返し掲載した事案で、「特に,原告の顔写真,氏名,住所等の個人情報を執拗に掲載し続けた点は極めて悪質である」として、慰謝料250万円、計275万円(前記の東京地方裁判所平成25年7月19日判決)
- 元配偶者が性的な写真を複数回掲示板に掲示した事案で、掲示について慰謝料150万円・弁護士費用15万円(東京地方裁判所平成28年12月14日判決(平成28年(ワ)第7388号))
- 源氏名について過去の成人向け作品への出演歴と整形を書いた投稿で、慰謝料80万円、開示費用36万5000円の全額を含む計128万1500円。実名や広く知られた通称が晒された場合と比べ「本件投稿による精神的苦痛の程度は限定的といえる」とされました(同令和6年5月7日判決(令和5年(ワ)第14145号))
- 豊胸手術をしているとの短い投稿で、信ぴょう性が高く評価されないとして慰謝料10万円、調査費用38万5000円を含む計53万3500円(同令和6年6月4日判決(令和5年(ワ)第21439号))
ペンネームの作家の本名と居住建物の投稿では、一義的な明示でなく読者も広くないとして慰謝料30万円とされたように(前記の東京地方裁判所令和6年5月10日判決)、慰謝料は情報の性質、実名か源氏名か、回数と執拗さ、読者の範囲で増減しています。特定にかかった費用の扱いは「投稿者の特定にかかった費用は取り戻せるか」、名誉毀損を含む全体の相場は「誹謗中傷の慰謝料・損害賠償額の一覧」をご覧ください。
6. 被害を受けた側が気をつけたい点
開示で知った投稿者の情報をネットに載せると、今度はこちらがプライバシー侵害の責任を負います。開示で知った投稿者の勤務先などを掲示板に22回載せた側について、プロバイダ責任制限法4条3項にも違反するプライバシー侵害とされ、相手の損害が22万円と評価されました(東京地方裁判所平成30年1月25日判決(平成29年(ワ)第17594号))。開示請求で特定した投稿者について、情報を開示された事実などを繰り返し X に投稿した側に、55万円の賠償が命じられた例もあります(同令和6年8月26日判決(令和5年(ワ)第30134号))。また、かつらの着用を明かした投稿についてプライバシー侵害は明らかとされながら、プロバイダの調査で該当する通信記録が見つからず、開示が認められなかった例もあります(東京地方裁判所令和5年9月26日判決(令和4年(ワ)第28553号))。投稿の画面と URL、投稿日時、前後の投稿を早めに保存しておくことが出発点になります。
7. 引用した判決
- 判断の枠組み 東京地方裁判所平成28年11月30日判決(平成27年(ワ)第1973号) ウェブサイト。三要件、経営者の新居の記事は違法でない。/東京地方裁判所平成25年7月19日判決(平成24年(ワ)第23429号) 動画サイト。真実かどうかを問わず責任、275万円。/東京地方裁判所令和3年7月16日判決(令和3年(ワ)第602号) ホストラブ。真実でない整形の投稿、出自。/東京高等裁判所令和4年12月21日判決(令和4年(ネ)第4031号) 掲示板。携帯電話番号、同定可能性は不要。/東京地方裁判所平成26年2月27日判決(平成25年(ワ)第27956号) 2ちゃんねる。芸能人でも範囲は狭まらない。/東京地方裁判所平成26年1月31日判決(平成25年(ワ)第29013号) 2ちゃんねる。代表取締役の不倫・妻の病気。/東京地方裁判所令和6年3月26日判決(令和5年(ワ)第9953号) 雑誌・ニュースサイト。都議会議員の記事は侵害なし。
- 本名・氏名・住所 東京地方裁判所令和3年1月19日判決(令和2年(ワ)第5248号) 5ちゃんねる。ハンドルネームで活動する人の氏名・前住所地。/大津地方裁判所彦根支部平成27年1月22日判決(平成26年(ワ)第125号) 掲示板。実名・住所の暴露など、195万円。/東京地方裁判所令和3年11月11日判決(令和3年(ワ)第16758号) X。匿名アカウントの持ち主の暴露。/東京地方裁判所令和3年2月25日判決(令和2年(ワ)第26673号) 爆サイ.com。下の名前だけでは不可。/東京地方裁判所令和4年10月24日判決(令和4年(ワ)第15249号) 爆サイ.com。氏名と年齢だけ。/東京地方裁判所令和5年2月16日判決(令和4年(ワ)第28071号) ホストラブ。氏名、自ら公開した SNS アカウント。/東京地方裁判所平成28年3月17日判決(平成27年(ワ)第413号) 2ちゃんねる・X。同姓同名の可能性では否定されない。/東京地方裁判所平成29年6月28日判決(平成29年(ワ)第10360号) 2ちゃんねる。登記された代表者の自宅住所。/東京高等裁判所平成29年11月1日判決(平成29年(ネ)第3590号) 2ちゃんねる。学校法人理事長の自宅住所。/東京地方裁判所令和6年5月10日判決(令和5年(ワ)第5000号) 5ちゃんねる。本名と居住建物、50万円。/東京地方裁判所平成27年11月13日判決(平成27年(ワ)第15933号) 掲示板。実家の県名だけ。/東京地方裁判所令和3年5月31日判決(令和2年(ワ)第31568号) 5ちゃんねる。別々の住所と氏名の投稿。
- 勤務先・連絡先・病歴・性的指向 東京地方裁判所平成27年6月18日判決(平成26年(ワ)第34762号) 掲示板。源氏名と本名、子の学校。/東京地方裁判所平成27年9月1日判決(平成26年(ワ)第31772号) 爆サイ.com。具体的でない勤務先の記載。/東京地方裁判所平成28年3月25日判決(平成27年(ワ)第26525号) 2ちゃんねる・ホストラブ。了承の下で公開済みの氏名と勤務先。/東京地方裁判所令和4年7月22日判決(令和4年(ワ)第876号) 爆サイ.com。本人の番号と想起されない数字。/東京地方裁判所令和2年8月21日判決(令和元年(ワ)第32207号) 電子掲示板。入院先・病名。/東京地方裁判所令和4年7月19日判決(令和4年(ワ)第9335号) ウェブサイト。障害認定。/東京地方裁判所令和4年2月3日判決(令和3年(ワ)第21938号) 爆サイ.com。真実と受け取られない感染の投稿。/東京地方裁判所令和4年6月23日判決(令和4年(ワ)第4578号) 爆サイ.com。病気を装っているとの投稿は名誉毀損。/東京地方裁判所平成30年6月21日判決(平成29年(ワ)第31645号) 電子掲示板。性別に関する経歴。/東京地方裁判所令和4年1月20日判決(令和3年(ワ)第24824号) X。一般の個人の性的指向。
- 家族・交際・学歴・年齢・逮捕歴 東京地方裁判所令和4年9月16日判決(令和4年(ワ)第13953号) 爆サイ.com。子の存在とひとり親。/東京地方裁判所令和3年11月25日判決(令和3年(ワ)第20484号) 掲示板。交際相手の存在。/東京地方裁判所令和4年1月19日判決(令和3年(ワ)第12463号) 爆サイ.com。家族構成の記載は否定。/東京地方裁判所平成27年12月8日判決(平成27年(ワ)第10300号) 掲示板。整形は肯定、結婚・同棲は否定。/東京地方裁判所令和6年3月29日判決(令和5年(ワ)第25354号) 5ちゃんねる。医学部受験の不合格。/東京地方裁判所令和4年12月21日判決(令和4年(ワ)第18201号) 5ちゃんねる。承諾して表示された出身校。/東京地方裁判所令和6年1月18日判決(令和5年(ワ)第70080号) 5ちゃんねる。検索で知られた年齢。/最高裁判所平成29年1月31日決定(平成28年(許)第45号) 検索エンジン。検索結果の削除の基準。/最高裁判所令和4年6月24日判決(令和2年(受)第1442号) X。逮捕報道を転載した投稿の削除。
- 否定の理由・削除・賠償 東京地方裁判所平成26年5月30日判決(平成25年(ワ)第27608号) 爆サイ.com。尋ねるだけの投稿。/東京地方裁判所令和2年11月24日判決(令和2年(ワ)第6156号) 電子掲示板。同一人物かの質問。/東京地方裁判所令和3年10月6日判決(令和2年(ワ)第27445号) 5ちゃんねる。仮定を述べる投稿。/東京地方裁判所平成29年8月30日判決(平成29年(ワ)第12188号) ホストラブ。投稿時点で判断。/東京地方裁判所令和5年3月14日判決(令和4年(ワ)第7714号) X。本人が明らかにしていた氏名・旧姓。/東京地方裁判所令和3年3月4日判決(令和2年(ワ)第23135号) 掲示板・Instagram。ストーリーの写真の転載。/東京地方裁判所令和8年8月18日判決(令和7年(ワ)第21237号) X・YouTube。法的措置の公表は侵害なし。/東京高等裁判所平成30年7月2日判決(平成29年(ネ)第5296号) 検索エンジン・ブログ。会社の破産の事実。/東京地方裁判所令和5年4月14日判決(令和4年(ワ)第13086号) 電子掲示板。被害者の家族による削除。/東京地方裁判所令和5年6月15日判決(令和4年(ワ)第32267号) Facebook・Instagram。アカウント自体の削除。/東京地方裁判所平成28年12月14日判決(平成28年(ワ)第7388号) 掲示板。性的な写真の掲示。/東京地方裁判所令和6年5月7日判決(令和5年(ワ)第14145号) 掲示板。出演歴・整形、128万1500円。/東京地方裁判所令和6年6月4日判決(令和5年(ワ)第21439号) ホストラブ。豊胸手術、53万3500円。/東京地方裁判所平成30年1月25日判決(平成29年(ワ)第17594号) 2ちゃんねる。開示で知った情報の掲載。/東京地方裁判所令和6年8月26日判決(令和5年(ワ)第30134号) X。開示を受けた事実の公表、55万円。/東京地方裁判所令和5年9月26日判決(令和4年(ワ)第28553号) 爆サイ.com。侵害は明らかでも通信記録が見つからず。
8. ご相談について
本名や住所、勤務先、病歴、家族のことなどを書かれ、投稿者の特定や削除、損害賠償をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。投稿の内容と、書かれた情報をこれまでどの範囲に明かしていたか、前後の投稿の流れをお知らせいただければ、上記の判決に照らして見通しをお伝えします。見通しが立たない投稿については、その旨をお伝えします。費用についてはFeeをご覧ください。
関連する解説
資料
- 民法709条・710条(不法行為)、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)5条1項(開示請求の要件)、東京地方裁判所昭和39年9月28日判決(「宴のあと」事件)、最高裁判所平成15年3月14日第二小法廷判決(民集57巻3号229頁)、最高裁判所平成29年1月31日第三小法廷決定、最高裁判所令和4年6月24日第二小法廷判決
- 集計の対象: 当事務所の裁判例データベースのうち争点にプライバシーが含まれる408件。要約と判決理由の骨子を読み、情報の種類、判断、否定の理由を手作業で分類した(重複あり)。逮捕歴など刑事事件の情報が中心の53件と、プライバシーを実質的に判断していない24件は種類別の集計から除いた。賠償額は17件の主文と骨子による。

サイバーアーツ法律事務所 弁護士(東京弁護士会、2007年登録)。インターネット上の権利侵害に関する事件のみを扱う。