ネット上の匿名の投稿で名誉を傷つけられた、私生活を暴かれた、写真を無断で使われたというとき、投稿者に損害賠償を求めたり刑事告訴をしたりするには、まず投稿者が誰かを知る必要があります。そのための手続が、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)5条に基づく発信者情報開示請求です。
この記事は、発信者情報開示請求の流れ、2022年10月に始まった発信者情報開示命令、通信記録の保存期間による時間の制約、開示が認められる条件、期間と費用の目安、特定した後の対応を、媒体を問わず、当事務所の裁判例データベースに収録している発信者情報開示の判決・決定2,371件(2013年〜2026年)をもとに整理したものです。媒体ごとの手続は、X、Instagram、Facebook、YouTube、5ちゃんねる、Googleマップ、ブログの各記事で扱っています。
要点
- 投稿者の特定は、通常2段階で進みます。サイトの運営者(コンテンツプロバイダ)から投稿やログインの際のIPアドレスと日時の開示を受け、そのIPアドレスを割り当てていた接続プロバイダ(経由プロバイダ)から契約者の氏名・住所の開示を受けます。データベースの2,371件のうち2,035件は、2段階目の接続プロバイダに対する請求です。
- 2022年10月に始まった発信者情報開示命令は、裁判所が決定で開示を命じる非訟手続です。提供命令を使うと、運営者と接続プロバイダに対する申立てを一体として審理できます。データベースに収録した2025年以降の判決37件のうち26件は、開示命令に対する異議の訴えの判決です。
- 接続プロバイダの通信記録は数か月程度で消えることが多く、消えた後は、権利侵害が明らかでも開示は認められません。プロバイダに記録を保全する義務はないとして、消去したプロバイダへの損害賠償も認めなかった判決があります。
- 開示が認められるには、権利侵害が明らかであることと、開示を受ける正当な理由が必要です。2,371件のうち、開示が全部認められたものは1,437件、一部認められたものは487件、認められなかったものは440件(19%)です。認められなかった理由は、感想・意見にとどまる、ログインと投稿の結び付きが認められない、書かれた事実が真実でないとはいえない、の3つが多くを占めます。
- 特定にかかった弁護士費用は、投稿者に対する損害賠償の中で損害と認められることが多く、高等裁判所には全額を損害と認めた判決があります。
1. 開示される情報と、請求の相手方
開示を求める対象は、プロバイダが保有する発信者情報です。範囲は総務省令で定められており、投稿者の氏名・住所のほか、電話番号(2020年8月の省令改正で追加)、メールアドレス、IPアドレス、投稿や通信の日時(タイムスタンプ)などが含まれます。
請求の相手方は、大きく2種類に分かれます。
- コンテンツプロバイダ(サイトの運営者) X、Googleマップ、5ちゃんねるのように、投稿を載せているサービスの運営者です。保有しているのは、通常、投稿やログインの際のIPアドレスと日時、登録された電話番号・メールアドレスで、氏名・住所は保有していないことがほとんどです。
- 接続プロバイダ(経由プロバイダ) 携帯電話会社、光回線の事業者、格安SIMの事業者など、投稿者がインターネットに接続するのに使った事業者です。IPアドレスと日時から契約者を調べ、氏名・住所を開示します。
データベースの2,371件を相手方で分けると、接続プロバイダに対するものが2,035件、コンテンツプロバイダに対するものが303件です。運営者に対する手続は仮処分や開示命令の決定で終わることが多く、決定は公表されることが少ないため、データベースの件数は接続プロバイダに対する判決に偏っています。
開示の請求を受けたプロバイダは、原則として投稿者の意見を聴かなければなりません(同法6条1項)。接続プロバイダは契約者に意見照会書を送り、契約者が開示に同意しなければ、裁判所の判断を待ちます。契約者が投稿を否定しても、それだけで開示が退けられるわけではありません。東京地方裁判所令和3年1月19日判決は、契約者が照会で投稿を認めなかった事案で、「特段の事情がない限り,侵害情報に係る通信記録から特定されたプロバイダの契約者は,当該侵害情報の送信者と推認される」として開示を命じています。
2. 投稿者にたどり着くまでの2段階
第1段階:運営者からIPアドレスなどの開示を受ける 5ちゃんねるや爆サイ.comのような掲示板は、投稿のたびに投稿者のIPアドレスとタイムスタンプを記録しています。5ちゃんねるの運営者は、弁護士からの請求に応じてこれを開示することが多く、裁判所の決定までは要しないのが通常です。
これに対して、X、Instagram、Facebook、Googleマップの口コミは、ログインしたときの通信記録しか残さない「ログイン型」のサービスです。投稿そのもののIPアドレスがないため、どのログインの記録を開示の対象にするかが争われます。改正法は、投稿と相当の関連性のあるログイン時の通信を侵害関連通信、その通信に関する発信者情報を特定発信者情報として、開示の対象になることを明文化しました(詳しくは「X・Instagramの投稿者をログイン記録から特定する方法と判決441件」)。登録された電話番号の開示を受け、携帯電話会社への照会で契約者にたどり着く経路もあります。
第2段階:接続プロバイダから契約者の氏名・住所の開示を受ける 開示されたIPアドレスを、その日時に割り当てていた接続プロバイダに対し、契約者の氏名・住所などの開示を求めます。回線を卸している事業者と、実際に契約者と契約している事業者が別の場合には、さらに次の事業者に対して手続をとります。東京高等裁判所令和6年10月23日判決は、投稿が複数の経由プロバイダを介してされ、最初の経由プロバイダが契約者の氏名等を保有していなかった事案で、提供命令によって最終の経由プロバイダを特定し、その事業者に開示を命じた決定を維持しています。
3. 手続の種類:開示命令、仮処分、訴訟
改正前の方法 2022年9月までは、運営者に対して仮処分でIPアドレスなどの開示を受け、接続プロバイダに対しては、記録の消去を禁じる仮処分を申し立てたうえで、氏名・住所の開示を求める訴訟を起こすのが一般的でした。データベースでも、施行前の判決1,745件のうち1,557件は、接続プロバイダに対する訴訟の判決です。
発信者情報開示命令 2022年10月1日に施行された改正法は、裁判所が申立てにより、決定で開示を命じる発信者情報開示命令を設けました(同法8条)。訴訟ではなく非訟手続で、裁判所は当事者の陳述を聴いたうえで決定します(同法11条3項)。決定に不服のある当事者は、告知を受けた日から1か月以内に異議の訴えを起こすことができ、その判決で決定が認可・変更・取消しされます(同法14条)。異議の訴えは、開示を命じられたプロバイダが起こすことも、申立てを却下された申立人が起こすこともあります。
提供命令 開示命令とあわせて申し立てる手続で、運営者に対し、①接続プロバイダの名称と住所を申立人に提供すること、②保有するIPアドレスなどをその接続プロバイダに提供することを命じます(同法15条)。東京地方裁判所令和6年7月19日判決は、この制度の趣旨を、両方の開示命令事件を一体的に審理し、接続プロバイダが発信者情報を特定・保全できるようにする点にあると説明しています。同令和6年7月16日判決は、運営者に対する開示命令の判断を経ないまま、接続プロバイダに開示を命じた手続を相当としました。この事案では、IPアドレスなどの提供を受けた接続プロバイダが通信記録1件を確認し、自動で消去されない措置をとっています。ただし、提供命令の扱いは運営者によって異なり、Instagram、Facebook、Googleでは提供命令を使うのが通常である一方、Xは提供命令に応じないため、運営者と接続プロバイダの手続を分けて進めます。
消去禁止命令 開示命令事件が終わるまでの間、相手方のプロバイダに、保有する発信者情報の消去を禁じる命令です(同法16条)。接続プロバイダに対する開示命令とあわせて申し立て、審理の途中で通信記録が消えることを防ぎます。
仮処分と訴訟 改正後も仮処分と訴訟は使えます。どれを選ぶかは、運営者の対応や投稿の数で決まります。データベースに収録した2025年以降の判決・決定37件のうち、開示命令に対する異議の訴えの判決が26件、訴訟の判決が8件、仮処分の決定が3件です。開示命令の決定そのものは公表されることが少なく、データベースに入るのは異議の訴えまで争われた事件が中心です。
4. 通信記録の保存期間と時間の制約
接続プロバイダの通信記録は、数か月程度で消去されることが多く、記録が消えると、その投稿の投稿者は特定できなくなります。
東京地方裁判所令和2年12月1日判決は、爆サイ.comの投稿について、接続プロバイダが通信から6か月を過ぎるとログを消去していると主張し、裁判所がこれを経験則に照らして合理的とした事案です。訴状が届いた時点で投稿から10か月以上が経っており、消去禁止の仮処分も保存の求めもなかったことから、接続プロバイダが発信者情報を保有しているとは認められず、請求は棄却されました。
東京地方裁判所令和3年3月4日判決は、医療法人が口コミの投稿者を特定しようとした事案です。運営会社に対する仮処分は一審で却下され、抗告審で認められてIPアドレスが開示されましたが、その時点で接続プロバイダは保存期間の経過により記録を消去していました。判決は、消去した記録の復元に莫大なコストを要するとの接続プロバイダの主張に合理性があるとして、発信者情報を保有しているとはいえないと判断しました。運営者に対する手続に時間がかかると、次の段階で記録が残っていないことがあります。
記録を消したプロバイダの責任を問うこともできません。東京地方裁判所令和3年5月19日判決は、訴状の送達までに記録を消去した接続プロバイダについて、「法には発信者情報の開示請求又は保全請求を受けた者に発信者情報を保全する義務を課した規定はなく」として損害賠償を認めず、消去のおそれがあるなら、訴訟の前に消去禁止の仮処分を申し立てるべきだったとしています。同令和3年8月19日判決も同じ判断です。保存期間内に調べても通信記録が見つからなかった場合も、開示は認められません(同令和5年9月26日判決)。
運営者の側のログイン記録にも保存期間があります。東京地方裁判所令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70061号)は、Xのログイン記録の保存期間の関係で、投稿から相当期間が経った後のログインしか残っていなかった事案で、「発信者を特定するためにより適切な手段があるとは認められない」として開示命令を維持しました。投稿に気づいたら、まず投稿のURLと表示画面を日時が分かる形で保存し、早い段階で手続を始めることが重要です。
5. 開示が認められる条件
権利侵害の明白性 投稿によって権利が侵害されたことが明らかであることが必要です(同法5条1項1号)。大阪高等裁判所平成30年11月28日決定は、「明らか」とは、権利侵害を根拠づける事実があることに加え、「不法行為等の成立を阻却する事由があることをうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味する」としています。開示を求める側が、公共性・公益目的・真実性といった事情がうかがわれないことまで示す必要があり(東京地方裁判所令和5年11月17日判決)、投稿者側が真実性を立証する損害賠償の訴訟とは逆の構造になっています。
データベースの争点を数えると(重複あり)、名誉毀損が1,623件、投稿が誰のことか分かるかという同定可能性が1,329件、事実の摘示か意見・論評かが917件、真実性が805件、名誉感情が561件、プライバシー・前科が322件、著作権が287件、肖像権・なりすましが115件です。本名ではなくハンドルネームで活動している人の同定可能性は「ハンドルネームへの誹謗中傷でも投稿者を特定できるか」にまとめています。
開示を受ける正当な理由 損害賠償の請求に必要な場合が典型です(同法5条1項2号)。開示を受けた者は、その情報をみだりに用いて投稿者の名誉や生活の平穏を害してはならないとされており(同法7条)、この義務に反する意図がある場合には正当な理由が否定されます。東京地方裁判所平成25年4月19日判決は、自分のブログで投稿者を晒し者にする、名前を公表すると繰り返し書いていた請求者について、同令和6年9月5日判決は、動画配信で投稿者への危害や情報の横流しを口にしていた申立人について、「不当な自力救済等を目的とする開示請求権の濫用のおそれがある場合には、正当な理由はないものと解するのが相当である」として、開示を認めませんでした。投稿者が訴訟に参加して名乗り出ていた場合(同令和6年3月21日判決)や、手続の途中で情報が任意に開示された場合(同令和7年3月7日判決)にも、正当な理由は否定されています。
プロバイダが情報を保有していること 開示の対象は、プロバイダが保有する情報に限られます。保有していることは開示を求める側が立証する必要があります(東京地方裁判所令和7年3月7日判決、同令和3年3月4日判決)。第4節の記録の消去は、この要件の問題です。
ログイン型の投稿:特定発信者情報の要件 ログイン時の通信の情報(特定発信者情報)の開示を求めるには、上の2つの要件に加えて、運営者が氏名・住所などの情報を保有していない、保有しているのが電話番号やメールアドレスだけである、といった事情が必要です(同法5条1項3号。補充性)。Xでは個人アカウントの作成に氏名と住所の登録が求められず、この要件を満たすとされています(前記の東京地方裁判所令和5年10月31日判決)。開示の対象となるログインについて、東京地方裁判所令和5年11月10日判決は、「侵害情報の送信と相当の関連性を有するログイン時の送信は、原則として1つであり」として、投稿に最も近いログインに限りました。一方、同令和6年7月22日判決は、投稿に近い57件のログインから投稿者を特定できなかった事案で、58番目のログインも対象になるとしています。仮処分でも、同令和5年1月31日決定が、記録の保存状況や他の通信と比べた相対的な時間の近さを考慮して、投稿から離れた時期のログインの開示を命じています。
6. 認められなかった理由の傾向
データベースの2,371件のうち、開示が認められなかったものは440件(19%)です。相手方で分けると、接続プロバイダに対するものは2,035件中340件(17%)、コンテンツプロバイダに対するものは303件中80件(26%)でした。改正法の施行の前後では、施行前の判決が1,745件中314件(18%)、施行後が626件中126件(20%)で、大きな差はありません。
媒体別では、口コミサイト(103件中40件、39%)、Googleマップ(68件中26件、38%)、転職会議(30件中10件、33%)で認められなかった割合が高く、X(482件中111件、23%)がこれに続きます。爆サイ.com(316件中42件、13%)、Instagram(60件中6件、10%)、2ちゃんねる(137件中13件、9%)は低くなっています。口コミは感想や評価が中心で、掲示板は具体的な事実の摘示や罵倒が多いことが一因と考えられます。
認められなかった440件の一行要約に現れる理由を数えると(重複あり)、次のとおりです。
- 投稿が感想・意見・論評にとどまる 83件
- ログインと投稿の結び付きが認められないなど、ログイン型に固有の理由 75件
- 書かれた事実が真実である、または真実でないとはいえない、公益目的がある 65件
- 社会的評価を低下させない 31件
- 投稿が請求者のことだと分からない(同定可能性) 30件
- 通信記録が消えているなど、プロバイダが情報を保有していない 22件
- 著作物の適法な引用に当たる 18件
- 名誉感情の侵害が受忍限度内 15件
- 開示を受ける正当な理由がない 5件
判決の例と、見通しを立てるときに確認する点は「発信者情報開示が認められなかった投稿の類型」にまとめています。開示が難しい投稿でも、運営者に対する削除請求が認められることはあります(「ネットの投稿を削除したい 削除が認められる基準と判決170件の傾向」)。
7. 期間と費用の目安
投稿者の氏名・住所が分かるまでの期間は、相手方の運営者によって大きく異なります。各記事に書いた目安は次のとおりです。
- 5ちゃんねる 運営者からのIPアドレスの開示は数日から1週間程度。氏名・住所が分かるまで1〜3か月程度
- X Xの開示まで2か月程度。氏名・住所が分かるまで3〜4か月程度
- Instagram・Facebook 運営会社の開示まで2〜3か月程度。氏名・住所が分かるまで3〜4か月程度
- Googleマップ・YouTube 初回期日まで1か月、ログの保有確認まで2か月、開示まで3か月以上。YouTubeでは氏名・住所が分かるまで4〜6か月程度
弁護士費用は、対象の投稿の数、相手方の数、どの手続を使うかで変わります。当事務所の費用はFeeのページに載せています。
費用を投稿者に請求できるか 特定にかかった費用は、投稿者に対する損害賠償の中で損害として請求できます。投稿者本人に対する判決のうち、特定費用の扱いを判断した26件では、全額を認めたものが11件、減額して一部を認めたものが9件、訴訟の弁護士費用や慰謝料の中で考慮したものが5件、認めなかったものが1件です。東京高等裁判所令和2年1月23日判決は、開示請求訴訟の弁護士報酬について、「特段の事情のない限り,その全額を名誉等毀損の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である」とし、同令和3年5月26日判決も、調査費用88万5600円の全額を損害と認めました。慰謝料が低い事案では特定費用も削られる傾向があり、判決ごとの金額は「誹謗中傷の投稿者特定にかかった費用は取り戻せるか」にまとめています。
8. 投稿者を特定した後にできること
損害賠償の請求と示談 開示された氏名・住所の投稿者に通知書を送り、示談の交渉をし、まとまらなければ訴訟を起こします。示談では、支払額だけでなく、投稿の削除、再投稿をしないこと、謝罪を条件にできます。損害賠償の請求権は投稿者を知った時から3年で時効にかかるため、開示を受けた後は早めに請求します。認められる慰謝料の額は「誹謗中傷の慰謝料・損害賠償額の一覧」にまとめています。
刑事告訴 名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪で、告訴は犯人を知った日から6か月以内にする必要があります。匿名の投稿では、開示によって投稿者の氏名が判明した日が起算点になると考えられています。手続の流れは「ネット上の誹謗中傷の刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)の流れ」をご覧ください。
削除との順序 投稿が先に削除されると、投稿の内容や日時の証明が難しくなります。特定まで考えている場合は、投稿のURL、表示画面、投稿日時を保存したうえで、開示請求を先行させるか、削除と開示を並行して進めるかを検討します。
9. ご相談について
ネット上の投稿について投稿者の特定をご検討の方は、メールフォームからご相談ください。原則として翌営業日までに回答します。投稿のURLと投稿の日時をお知らせいただければ、媒体と経過時間に応じた手続の見通しをお伝えします。投稿の表示画面などの証拠の保全は、ご相談の後に当事務所で行います。費用についてはFeeをご覧ください。
関連する解説
- X・Instagramの投稿者をログイン記録から特定する方法と判決441件
- 発信者情報開示が認められなかった投稿の類型(裁判例414件の理由別の整理と、媒体別の割合)
- 誹謗中傷の投稿者特定にかかった費用は取り戻せるか|判決26件の集計
資料
- 情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)5条1項(発信者情報の開示請求。1号が権利侵害の明白性、2号が正当な理由、3号が特定発信者情報の補充性)、5条3項(侵害関連通信)、6条1項(発信者の意見の聴取)、7条(開示を受けた者の義務)、8条(発信者情報開示命令)、11条3項(当事者の陳述の聴取)、14条(異議の訴え)、15条(提供命令)、16条(消去禁止命令)
- 集計の対象: 当事務所の裁判例データベースに収録している裁判例のうち、請求に発信者情報開示を含む判決・決定2,371件(判決日2013年1月〜2026年8月。BitTorrentなどファイル共有ソフトの事件120件を含む)。「認められなかった」は開示請求者側の敗訴に分類したもの。理由の分類は一行要約に現れる語による(重複あり)。期間と特定費用の数字は上記の各記事による。
引用した裁判例
各リンク先に、事案の概要と判決理由の骨子があります。
- 大阪高等裁判所平成30年11月28日決定(平成30年(ラ)第656号) 「明らか」の意味。口コミの仮の開示を認めず
- 東京地方裁判所平成25年4月19日判決(平成24年(ワ)第24740号) 投稿者を晒す意図があるとして正当な理由を否定
- 東京高等裁判所令和2年1月23日判決(令和元年(ネ)第3668号) 開示請求訴訟の弁護士報酬の全額を損害と認定
- 東京地方裁判所令和2年12月1日判決(令和2年(ワ)第7503号) 投稿から10か月以上経過し、保有を認めず棄却
- 東京地方裁判所令和3年1月19日判決(令和2年(ワ)第20852号) 契約者が投稿を否定しても送信者と推認して開示
- 東京地方裁判所令和3年3月4日判決(令和2年(ワ)第27307号) IPアドレスの開示時には接続プロバイダが記録を消去
- 東京地方裁判所令和3年5月19日判決(令和2年(ワ)第20544号) 保全義務はなく、消去禁止の仮処分をすべきだった
- 東京高等裁判所令和3年5月26日判決(令和2年(ネ)第4412号) 調査費用88万5600円の全額を損害と認定
- 東京地方裁判所令和3年8月19日判決(令和2年(ワ)第20546号) 記録を消去した経由プロバイダの賠償責任を否定
- 東京地方裁判所令和5年1月31日決定(令和4年(ヨ)第3301号) 仮処分で、投稿から離れたログインの開示を命令
- 東京地方裁判所令和5年9月26日判決(令和4年(ワ)第28553号) 通信記録が見つからず、保有を認めず棄却
- 東京地方裁判所令和5年10月31日判決(令和5年(ワ)第70061号) X。補充性を認め、相当期間後のログインも開示
- 東京地方裁判所令和5年11月10日判決(令和5年(ワ)第13298号) X。侵害関連通信は原則として最も近いログイン1つ
- 東京地方裁判所令和5年11月17日判決(令和5年(ワ)第21134号) 違法性阻却事由がないことは請求する側が立証
- 東京地方裁判所令和6年3月21日判決(令和5年(ワ)第26526号) 投稿者が名乗り出ており、正当な理由を否定
- 東京地方裁判所令和6年7月16日判決(令和6年(ワ)第4994号) 運営者への判断を経ない経由プロバイダへの開示命令を相当とした
- 東京地方裁判所令和6年7月19日判決(令和6年(ワ)第4998号) 提供命令の履行後も運営者への開示命令を認可
- 東京地方裁判所令和6年7月22日判決(令和5年(ワ)第25461号) X。58番目のログインも開示の対象
- 東京地方裁判所令和6年9月5日判決(令和5年(ワ)第30697号) 危害を口にしていた申立人の正当な理由を否定
- 東京高等裁判所令和6年10月23日判決(令和6年(ネ)第2348号) 提供命令で特定した最終の経由プロバイダへの開示命令を維持
- 東京地方裁判所令和7年3月7日判決(令和6年(ワ)第70052号) 保有の立証責任は請求者。任意開示済みの情報は対象外

サイバーアーツ法律事務所 弁護士(東京弁護士会、2007年登録)。インターネット上の権利侵害に関する事件のみを扱う。